セッション情報 ワークショップ10(消化器病学会)

膵の再生と線維化-progenitor cell・stellate cellの役割-

タイトル 消W10-7:

糖尿病に伴う膵島線維化と膵星細胞:コノフィリンによる膵島線維化の抑制

演者 小島 至(群馬大生体調節研究所)
共同演者 斉藤 理恵(群馬大生体調節研究所)
抄録 進行した糖尿病では膵島が線維化し病態を増悪させる。一般に臓器線維化は、組織障害の修復過程においてTGF-βなどが基質蛋白を過剰産生させることによる。近年、膵炎・膵癌の線維化に膵星細胞が関与すること、アクチビンが星細胞の活性化を促進することが報告されている。一方、アクチビンは膵β細胞分化誘導因子でもあり、in vitro、in vivoでβ細胞分化を促進する作用をもつ。したがってアクチビンやそのアナログ分子を糖尿病に対する再生医療に用いる際には、膵星細胞に対する作用も考慮しなくてはならない。我々は、二型糖尿病モデル動物であるGKラットの膵島線維化に膵星細胞が関与していること、膵星細胞初代培養系を用いて、アクチビン類似のβ細胞分化誘導作用をもつコノフィリンがアクチビンとは逆に膵星細胞活性化を抑制することなどを明らかにしてきた。そこで in vivo において膵島線維化に対するコノフィリン投与の効果を検討した。GKラットを無作為にコノフィリン群とコントロール群にわけ、膵星細胞の膵島への浸潤が観察され始める6週齢より4週間連日経口投与を行った。投与期間中、両群で体重、随時血糖に差はなかったが、4週間投与後のipGTTの血糖はコノフィリン群では有意に低下を認め、インスリン含量は約2倍に増加した。さらに、マッソントリクローム染色を施行した膵組織での解析では、膵島内線維化率がコノフィリン群で著明に低下し、星細胞やマクロファージ浸潤も消失していた。コノフィリンは膵星細胞の活性化を抑制し、線維化抑制作用とβ細胞分化促進による糖代謝の改善作用を示した。糖尿病再生医療におけるコノフィリンの有用性が示唆された。
索引用語 線維化, 膵星細胞