セッション情報 ワークショップ10(消化器病学会)

膵の再生と線維化-progenitor cell・stellate cellの役割-

タイトル 消W10-8:

スタチンの実験慢性膵炎モデルに対する治療効果

演者 山本 光勝(産業医大・3内科)
共同演者 大槻 眞(産業医大・名誉教授), 原田 大(産業医大・3内科)
抄録 【目的】慢性膵炎に対する治療は確立されておらず、膵臓の線維化は不可逆的である。我々はOtsuka Long-Evans Tokushima Fattyラットにスタチンを投与すると、膵臓の線維化が軽減することを報告し(Br J Pharmacol 2010)、スタチンは慢性膵炎に効果的である可能性を示した。今回我々は慢性膵炎実験モデルを用いてその効果を検討した。【方法】我々が開発した膵管内圧負荷によるラット慢性膵炎モデル(Am J Physiol 2006)に、膵線維化が形成された後である膵管内圧負荷開始2日後からpravastatin 10mg/kg体重を12日間投与した(Pra群)。膵管内圧を加えスタチンを投与しない実験群を対照とした。【成績】対照群では膵臓の線維化は経時的に進行したが、Pra群ではスタチン投与開始後膵線維化の進行は抑制され、圧負荷開始14日後では線維化率は有意に抑制された(対照群15.0% vs. Pra群 5.5%)。またPra群ではαSMA陽性細胞の発現と炎症細胞浸潤は対照群と比較して軽減した。また膵臓のTGF-β1、TNF-α mRNA発現はPra群では対照群よりも有意に低下し、IL-10 mRNAの発現はPra群では有意に増加していた。膵臓のsuperoxide dismutase活性はPra群では対照群と比較して有意に増加し、8-OHdG免疫染色では同陽性細胞はPra群で有意に減少していた。またセクレチン投与に対する膵外分泌機能は、Pra群は対照群と比較して膵液量、アミラーゼ活性、重炭酸濃度の何れも有意に増加した。【結論】スタチンは膵管内圧実験モデルで線維化が生じた後から投与してもその進展を抑制し、そのメカニズムとして抗酸化作用とIL-10発現の亢進が考えられた。以上よりスタチンは慢性膵炎治療に有効である可能性が示唆された。
索引用語 慢性膵炎, スタチン