セッション情報 |
ワークショップ10(消化器病学会)
膵の再生と線維化-progenitor cell・stellate cellの役割-
|
タイトル |
消W10-10:TGF-αによる膵星細胞のMMP-1活性増加は遊走能活性化に関与する
|
演者 |
田原 博貴(群馬大大学院・病態制御内科学) |
共同演者 |
佐藤 賢(群馬大大学院・病態制御内科学), 森 昌朋(群馬大大学院・病態制御内科学) |
抄録 |
【目的】膵線維化の中心的役割を果たす膵星細胞(PSC)は、TGF -β、PDGFなどの増殖因子により活性化される。慢性膵炎や膵癌においてTGF-αの発現亢進の報告があるが、その詳細に関しては不明である。そこで、TGF-αのPSCにおける役割やメカニズムについて検討を行った。【方法】ヒトPSCの培養株であるRLT-PSCを用い、TGF-αを添加・培養し、増殖能、遊走能の変化、線維化関連遺伝子のmRNA、蛋白発現の変化、さらに、そのメカニズムを検討した。また、ヒト慢性膵炎、膵癌組織において免疫組織学的検討を行った。【結果】TGF-αは、PSCの増殖能と遊走能を亢進させた。また、Collagen 1a(I)とTIMP-1 mRNAの発現に変化を認めなかったが、MMP-1 mRNAの発現は濃度依存性に増加した。次にMMP-1単独刺激でもPSCの遊走能亢進が確認された。さらにTGF-αによるPSCの遊走能の亢進は、MMP-1の阻害剤(TIMP-1)またはMMP-1 siRNAの導入によって阻害されたことから、TGF-αがMMP-1を介して膵星細胞の遊走能を亢進すると考えられた。一方、TGF-αによるMMP-1発現は、TGF-αの受容体であるEGFRの阻害剤(Gefitinib)によって阻害され、またERK1/2経路の阻害剤(PD98059)、Akt経路の阻害剤(LY294002,Wortmannin)でも阻害された。また、MEKまたはAktのDominant negative mutantのPSCへの導入により、MMP-1の発現が抑制されることを確認した。ヒト膵組織の免疫組織化学的検討では、TGF-α、MMP-1は慢性膵炎と膵癌で発現し、間質におけるMMP-1の発現は、正常膵より増強していた。【結論】TGF-αは、PSCの増殖能、遊走能を亢進させ、慢性膵炎、膵癌での線維化に関与する可能性が示唆された。またTGF-αによる遊走能の亢進にはEGFR からERK1/2、Aktシグナル伝達経路を介するMMP-1活性の増加が関与していると考えられた。 |
索引用語 |
膵星細胞, TGF-α |