セッション情報 ワークショップ11(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

下部消化管疾患に対する拡大内視鏡の最前線

タイトル 外W11-1:

大腸上皮性腫瘍の質的診断におけるFICEの役割

演者 中川 正(奈良県立医大・消化器・総合外科)
共同演者 藤井 久男(奈良県立医大・中央内視鏡・超音波部), 中島 祥介(奈良県立医大・消化器・総合外科)
抄録 当科では、血管性・炎症性・腫瘍性など様々な大腸病変に対し通常観察と同時に適宜FICE観察を併せて行っている。概して血管構造が強調されることにより病変がより明瞭に観察される印象があるが、具体的advantageを実感するには未だ至っていない。一方、大腸上皮性腫瘍については、retrospectiveに2010年3月から9月に当科で切除された大腸腫瘍性病変について、FICE拡大観察画像を広島大学のKanaoらのNBI分類(Gastrointest Endosc. 2009)に準じて分類し検討した。全150病変のうち過形成性ポリープ9病変、腺腫128病変、粘膜内~SM1000μm未満浸潤癌が11病変、SM1000μm以深浸潤癌2病変であった。TypeA8病変の内訳は過形成性ポリープ7病変、腺腫1病変であった。TypeBに分類された136病変の内訳は過形成性ポリープ2病変、腺腫125病変、粘膜内~SM1000μm未満浸潤癌が9病変であった。TypeC1に分類された4病変の内訳は腺腫2病変、粘膜内~SM1000μm未満浸潤癌が2病変であった。TypeC2に分類されたものはなかった。TypeC3に分類された2病変全てがSM1000μm以深浸潤癌であった。総病変のうち90%が腺腫という偏った母集団ながら、TypeAは過形成性ポリープの診断指標としては感度7/9 77.8%、特異度140/141 99.3%、TypeBは腺腫~SM1000μm未満浸潤癌について感度134/139 96.4%、特異度9/11 81.8%、TypeC3はSM1000μm以深浸潤癌について感度2/2 100%、特異度148/148 100%であった。これらの結果は、非腫瘍性病変・内視鏡的摘除適応病変・外科的切除適応病変のふるい分けおけるFICE拡大観察診断の妥当性を示すものと考えられた。本分類について言えば、従来の色素を用いたpit pattern診断との関係において、TypeCの取り扱いの中に大腸内視鏡検査の効率と精度を向上させる鍵が含まれていると思われる。今後、他の既存分類との違いを整理し、画像強調観察(IEE)の実効的な位置づけを検討する必要がある
索引用語 大腸腫瘍, FICE