セッション情報 ワークショップ11(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

下部消化管疾患に対する拡大内視鏡の最前線

タイトル 内W11-13:

表在型大腸低分化腺癌の拡大内視鏡所見の検討

演者 坂本 琢(国立がん研究センター中央病院・消化管内視鏡科)
共同演者 松田 尚久(国立がん研究センター中央病院・消化管内視鏡科), 斎藤 豊(国立がん研究センター中央病院・消化管内視鏡科)
抄録 【目的】大腸低分化腺癌の内視鏡像 (通常および拡大内視鏡) について検討する。【方法】当院の病理データベースより、2000年以降に “poorly differentiated adenocarcinoma” を最終診断としている症例を検索した (91例)。全対象症例中、内視鏡的に表在型 (0型) と診断した8症例について、色素拡大内視鏡像、NBI拡大内視鏡像を含めた内視鏡所見について検討した。【成績】病変径の中央値は11 (5-22) mm。病変局在は、5例 (62.5%) が上行結腸、2例 (25%) が横行結腸、1例 (12.5%) がS状結腸であった。肉眼型は Ip+IIc, Is+IIcが各1例、IIa+IIcが6例で、全症例において陥凹局面が認識された。拡大内視鏡観察では、pit patternは「染色性低下および腺管開口部の消失傾向」が共通した所見で、視認されるpitは、組織との対応により低分化腺癌内に散在する高または分化型腺癌成分であると推察された。一方、NBI拡大観察における共通所見は、network構造が全く確認できず、断片化した不整な走行を呈する異常血管が比較的等間隔に分布していることであった。病理組織学的には、浸潤度は5例 (62.5%) がSM深部浸潤癌で、他3例はMP以深の進行癌であった。粘膜内病変は5例で確認され、全てに分化型腺癌と判定される癌腺管がわずかながら混在していた。また、粘膜内病変が認識されない病変においては、1例で中分化腺癌が混在していたが、他2例は低分化腺癌成分のみであった。【結論】表在型の大腸低分化腺癌では、非拡大観察での陥凹局面の存在と、その組織像を反映した拡大観察下の「pitの著明な減少」や「染色性の低下」が特徴的であった。一方、NBI拡大観察では、血管密度は低下しているとはいえず、networkを呈さない異常血管より構成されることが多いと考えられた。色素拡大観察におけるpit patternとNBI拡大によるvascular patternを包括的に判定することで、大腸領域における低分化腺癌の内視鏡診断の可能性が示唆された。
索引用語 大腸, 低分化腺癌