セッション情報 ワークショップ12(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝癌局所制御の標準化

タイトル 消W12-2:

肝細胞癌前治療部位の治療効果と接着分子発現-移植摘出肝からの考察-

演者 日高 匡章(長崎大大学院・移植・消化器外科学)
共同演者 高槻 光寿(長崎大大学院・移植・消化器外科学), 江口 晋(長崎大大学院・移植・消化器外科学)
抄録 【目的】欧米と比べて生体肝移植が多い本邦では、肝移植に至る前に何らかの局所療法を施行されている肝細胞癌(HCC)症例が多い。また、E-cadherin (E-cad)は接着分子の一種であり、肝切除後肝内再発を来す群で発現が低下しているとHCCは肝内転移を来しやすいと報告されている。今回、移植摘出肝を用いて、前治療による局所療法への影響と接着分子の検討を行った。
【方法】2011年2月までに当科で施行した生体肝移植142例中、HCCは54例(HBV 12例、HCV 22例、B+C 1例、nonBnonC 1例)であった。そのうち前治療歴のある症例は35例であった。患者背景はChild Pugh 10 (以下中央値, 5-13)、MELD score 14 (4-40)、AFP 12.9 ng/ml (1.9-806)、PIVKA-II 43 mAU/ml (6-423)であった。前治療はTACE 21例、局所療法20例( PEI 9例、RFA 15例、MCT 1例重複有り)であった。画像上壊死と判断した前治療部位(27ヶ所)における局所療法の効果、E-cad発現、前治療例における肝移植による効果について検討した。術前MD-CT, MRIにてHCCを評価、摘出肝全肝を用いて画像診断との対比による局所療法の効果と局所療法部位におけるE-cadの発現を検討した。
【成績】術前画像診断にて完全壊死と判断されていた27ヶ所のうち、組織学的に8ヶ所(29.6%)HCCが残存していた。残存していたHCCの特徴は、腫瘍径が小さく(中央値3.6mm)、高分化(5/8)、境界不明瞭(8/8)であった。残存腫瘍内におけるE-cad発現を6ヶ所(75%)で認めた。前治療歴のある35例と前治療歴のない19例での生存率に有意差は認めなかった(3年生存率74% vs 64% p=0.14)。
【結論】画像上壊死していると思われる前治療部位には約30%組織学的にHCCが残存していた。しかし残存腫瘍内の接着分子発現は保たれており、生存率には寄与しない可能性が示唆された。
索引用語 肝細胞癌, 局所療法