セッション情報 ワークショップ12(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝癌局所制御の標準化

タイトル 肝W12-7:

肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法における局所再発の検討:特に脈管に接する肝癌について

演者 岩田 郁(福岡大・消化器内科)
共同演者 早田 哲郎(福岡大・消化器内科), 向坂 彰太郎(福岡大・消化器内科)
抄録 【目的】当科では2000年8月より肝腫瘍に対する経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)を導入し、のべ1500回以上の治療を行っている。小肝癌に対するRFAの治療効果は肝切除と比較して遜色のない治療効果が得られているが、RFAでは肝切除には少ない局所再発が問題となる。また、RFAでは脈管近傍の腫瘍は脈管の血流による冷却効果のため焼灼不十分となり、局所再発を起こす可能性が示唆されている。我々は、2004年に、RFA治療における局所再発は、腫瘍が脈管近傍に位置する場合に多いこと、腫瘍の脈管側にエタノール注入療法(PEI)を併用することで局所再発が少なくなることを報告した。今回、脈管近傍に位置する肝癌に対しRFA単独とRFAにPEIを併用した2群に分け、前向きに経過観察した。【対象】肝癌に対する初回ラジオ波治療を行った531例。【方法】近傍に脈管が位置する肝癌と近傍に脈管が位置しない肝癌の局所再発率を検討。また、肝癌が脈管の近傍に位置した症例をRFA単独群(152例)とRFA施行時に脈管側にPEIを併用した併用群(121例)の2群の局所再発を検討した。腫瘍近傍の脈管は腫瘍との距離を0.5cm以内と定義し、局所再発の定義は前回治療部と連続した病変とした。【結果】近傍に脈管が位置する肝癌と近傍に脈管が位置しない肝癌の治療後の局所再発率(1年、2年、3年)は近傍脈管有りが(0.8%、6.5%、15.2%)、近傍脈管無しが(1.0%、4.3%、8.1%)と有意(P=0.0316)に脈管の近傍に位置した肝癌の方が局所再発を多く認めた。脈管近傍に肝癌が位置する症例(273例)において、RFA単独群の局所再発は152例中45例(29.6%)、併用群の局所再発は121例中15例(12.4%)であり、脈管側にPEIを併用した群において有意(P<0.001)に局所再発が少なかった。【結語】脈管近傍の肝癌は局所再発を起こしやすいことが判明した。また脈管側にPEIを併用することで局所再発を少なくすることができ、脈管近傍の肝癌ではPEIを併用することが推奨される。
索引用語 RFA局所再発, 腫瘍近傍脈管