セッション情報 ワークショップ12(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝癌局所制御の標準化

タイトル 肝W12-10:

腫瘍径3 cm超の肝細胞癌に対するLip-TACE併用RFA療法―RFA単独療法との無作為化比較試験

演者 森本 学(横浜市立大市民総合医療センター・消化器病センター)
共同演者 沼田 和司(横浜市立大市民総合医療センター・消化器病センター), 田中 克明(横浜市立大市民総合医療センター・消化器病センター)
抄録 【背景と目的】血流遮断を併用した冷却軽減効果はラジオ波焼灼 (RFA) による壊死域を拡大することが可能である.また,リピオドールを用いたTACE (Lip-TACE) において坦癌区域に薬剤を圧入して塞栓を行うと,門脈を含めた塞栓効果が得られることが知られている.今回は非切除肝細胞癌症例におけるLip-TACE併用RFA療法の局所コントロールへの寄与を検証する.【症例と方法】2002年1月以降,当院では3-5cm大の中型肝細胞癌あるいは肝辺縁に局在するような症例に対しLip-TACE併用RFAを適応してきた.今回は全86症例の治療成績に加え,2005年~2009年に実施した3-5cm大の単発肝癌に対するLip-TACE併用RFAとRFA単独の無作為化比較試験の成績 (併用群18例,単独群17例),肝表に局在する44例に対する区域性壊死を目指した同併用療法の局所コントロール能を検証する.【結果】Lip-TACE施行症例の背景因子(平均値)は、年齢70歳,最大腫瘍径3.4 cm,単発58%,Child A 88%,AFP 394 ng/ml,DCP 3414 ng/ml,ALB 3.8 g/dlであった.全症例の3,5,7年生存期間は,78%,56%,49%と良好であった.単発肝癌に対するRFA単独治療との無作為化試験では,壊死域サイズの長径/短径 (併用群58 mm/50 mm vs. RFA単独群50 mm/41 mm. P = 0.012), 穿刺回数 (併用群1.1回 vs. RFA単独群1.4回. P <0.01) に有意差を認め,3年局所再発率も併用群が有意に低率であった (併用群6% vs. 単独群39%. P = 0.012).辺縁に局在する44例に対するLip-TACE併用RFAでは88%で坦癌区域を含めた区域性壊死を呈し,その後壊死区域は著明に萎縮し区域内の局所再発は認めなかった.【考案】腫瘍径3 cm超の肝細胞癌に対して,Lip-TACE併用RFAは局所制御の観点からRFA単独より優れていた.また,RFA単独でのablative marginの確保が事実上困難と考えられる肝辺縁に局在する症例において,併用療法は坦癌区域全体の壊死効果をもたらし外科的切除に匹敵する効果を期待し得る.
索引用語 ラジオ波焼灼療法, 経カテーテル的肝動脈化学塞栓療法