セッション情報 ワークショップ12(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝癌局所制御の標準化

タイトル 外W12-12:

肝細胞癌の局所再発率低減に向けた切除術式の工夫

演者 進藤 潤一(東京大・肝胆膵外科)
共同演者 長谷川 潔(東京大・肝胆膵外科), 國土 典宏(東京大・肝胆膵外科)
抄録 【目的】肝細胞癌(HCC)の切除後局所再発抑制を目的とし、担癌Segmentの解剖学的切除と切除断端距離が再発率に与える影響について検討を行う。
【方法】過去14年間に根治的肝切除を行った初発HCC症例のうち、術前の画像診断で明らかな脈管侵襲を認めず、主腫瘍が単発であった384例を対象とした。局所再発低減を狙った解剖学的切除の成績と切除断端距離の意義について解析を行った。
【結果】解剖学的切除(n=254)と非解剖学的切除(n=130)の成績を比較すると、1年・3年・5年再発率はそれぞれ21.8%, 47.9%, 58.8%および22.3%, 64.6%, 75.9%であり、解剖学的切除において再発が有意に低率であった(p=0.004)。一方、切除断端距離は中央値3mm (0-55mm)であり、単変量解析では1mm増すごとに再発リスクは0.97倍 (95%CI 0.95-0.99, p=0.005)と予測された。再発に有意な相関が疑われた患者背景因子・各臨床パラメータに関してCox比例ハザードモデルを用いた多変量解析を行うと、1) HCV感染 (HR 1.6, p=0.002), 2) 顕微鏡的脈管侵襲・顕微鏡的転移 (HR 1.5, p=0.007), 3) DCP>100mAu/mL (HR 1.5, p=0.01), 4) 肝硬変 (HR 1.4, p=0.01), 5) 非解剖学的切除 (HR 1.4, p=0.02)の5つが再発と有意な相関を示し、切除断端距離は有意な因子ではなかった(p=0.25)。
【結論】HCCの局所再発抑制の観点からは、広い切除断端距離を確保することよりも担癌Segmentを系統的に切除することの意義の方が大きいと考えられる。
索引用語 肝細胞癌, 肝切除