セッション情報 ワークショップ13(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会・消化吸収学会合同)

高齢者における消化器疾患の診断と治療

タイトル 消W13-1:

超高齢者の出血性胃十二指腸潰瘍に関する検討

演者 枡 かおり(仙台市医療センター仙台オープン病院・消化器内科)
共同演者 平澤 大(仙台市医療センター仙台オープン病院・消化器内科), 藤田 直孝(仙台市医療センター仙台オープン病院・消化器内科)
抄録 【背景・目的】高齢化社会により80歳以上の超高齢者の出血性胃十二指腸潰瘍(HGDU)を診療する機会が多くなった。当院の超高齢者HGDU症例を検討し、その問題点を浮き彫りにすることを目的とした。【対象・方法】2005.1‐2009.12に入院加療したHGDU501症例を対象に、80歳以上の超高齢者93例をA群、80未満の408例をB群とした。内服歴、ASA、内視鏡的止血成功率、死亡率、H. pylori (Hp)感染および検査や除菌の実態、潰瘍再発に関して両群間で比較検討した。A群/B群の頻度は19%/81%、平均年齢は84.6歳(80-97歳)/58.0歳(20-79歳)、男女比は44: 49/311: 97(p<.001)であった。【結果】A群/B群で抗血小板薬やNSAIDsの内服は各々57%/23% (p<.001)、ASAIII以上は31%/7% (p<.001)であった。内視鏡的止血成功率は92%/99% (p<.005)で,非成功例は在院死が各々7例/3例で、HGDUが契機の死亡例は4.3%/0.5% (p=.06)とA群に多い傾向であった。手術移行がB群の2例に見られた。Hp検査率は50%/80% (p<.001)でA群の半数でHp未検査であった。A群では他の併存疾患治療を優先したため、その後Hp検査が行われなくなった症例が多く見られた(44%)。一方、B群は自己判断による通院加療中断が主な理由であった(29%)。Hp検査施行例のHp陽性率は53%: 84% (p<.001)で、A群にHp陰性潰瘍が有意に多かった。Hp陰性潰瘍のうち抗血小板薬やNSAIDsの内服例は70%/42% (p<.001)とA群で有意に多かった。Hp陽性例中の除菌未施行は48%/10% (p<.001)で、A群で多かった。除菌未施行の理由は、A群は高齢のため通院困難や併存疾患治療を優先した例が50% (6例)、B群は受診自己中断例が33% (9例)と最も多かった。2次除菌も含めた除菌成功率は75%/99% (p<.001)で、除菌不成功がA群で多くみられた。1年以上経過観察できたHGDU(A群18例、B群180例)の、再発率は各々21%/11% (p=.08)であった。【考察】超高齢者HGDUは全体の19%を占め、80歳未満例と比較して、全身状態不良例やHp陰性潰瘍が多く見られた。超高齢者は併存疾患や通院困難のためガイドラインに従ったHp検査や除菌が難しい場合が多かった。再発例が多い傾向がみられ、さらなるガイドラインの遵守を、それが困難な場合は維持療法を継続すべきと考えた。
索引用語 出血性胃十二指腸潰瘍, H. pylori