セッション情報 ワークショップ13(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会・消化吸収学会合同)

高齢者における消化器疾患の診断と治療

タイトル 内W13-2:

高齢者におけるカプセル内視鏡診断を通じた小腸精査のあり方

演者 若松 隆宏(関西医大・3内科)
共同演者 島谷 昌明(関西医大・3内科), 岡崎 和一(関西医大・3内科)
抄録 【目的】侵襲の少ないカプセル内視鏡(CE)は高齢者において有用であるがその診断を受け侵襲の多いダブルバルーン内視鏡(DBE)を高齢者にも非高齢者と同様のアルゴリズムで行なうべきか検討の余地がある.そこで高齢者におけるCE診断後の経過につき当施設での症例をもとに検討した.【方法】対象は現在までに当院でCEを行なった75歳以上の高齢(A)群45例(平均80.3歳,最高齢92歳)と74歳以下の非高齢(B)群140例(平均58.8歳,最少齢15歳). CE結果により各症例を無所見群(C0),微小所見(点状発赤や血管拡張など)群(C1),粘膜傷害を認めるが非顕性出血群(C2),顕性出血群(C3),腫瘍性病変群(C4)に分け,またCE結果を受けDBE非施行群(D0),DBE施行も無所見群(D1),有所見も経過観察群(D2),止血処置施行群(D3),腫瘍性病変群(D4)に分け検討した.【成績】CEの大腸到達率はA群で66.7%,B群で79.3%とA群で低かった.滞留はA群では無くB群で3例(2.1%)認めた.DBEによる偶発症はA群では無くB群で術後膵炎を3例(7.0%)認めた.CE結果はC0:A群33.3%/B群35.0%,C1:A群13.3%/B群20.7%,C2:A群20.0%/B群18.6%,C3:A群8.9%/B群14.3%,C4:A群13.3%/B群4.3%.なおCEで小腸外(胃/大腸)出血と判明したものがA群で11.1%,B群で7.1%あった.CE後のDBEはD0:A群71.1%/B群69.3%,D1:A群15.6%/B群8.6%,D2:A群2.2%/B群7.9%,D3:A群2.2%/B群8.6%,D4:A群8.9%/B群5.7%.A群のCE無出血例(C0/1/2)でDBEを行ったのは10%(3/30)で結果は全てD1,C3/4では重度心不全1例を除きDBEを施行しているがC3→D3は25.0%(1/4)にすぎなかった.一方B群のC0/1/2でDBEを行ったのは17.3%(18/104)で結果はD3が2例,C3→D3は50.0%(10/20)でC3→D4が15.0%(3/20)あった.【結論】今回の検討でCE,DBE施行により高齢者に偶発症発生例はなく小腸精査において高齢者も非高齢者と同様の対応が可能と考えるが,CEで顕性出血例でもDBEで止血処置を要する例は比較的少なく,薬剤性病変の場合休薬で改善することも多い.年齢に関わらず全身状態,患者背景を充分に考慮し各検査適応を検討すべきである.
索引用語 小腸, 高齢者