セッション情報 ワークショップ13(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会・消化吸収学会合同)

高齢者における消化器疾患の診断と治療

タイトル 消W13-4:

高齢者の潰瘍性大腸炎患者の治療 -名古屋市立大学病院の現状-

演者 溝下 勤(名古屋市立大大学院・消化器・代謝内科学)
共同演者 谷田 諭史(名古屋市立大大学院・消化器・代謝内科学), 城 卓志(名古屋市立大大学院・消化器・代謝内科学)
抄録 【目的】我が国では潰瘍性大腸炎(UC)の患者数が年々増加しており、高齢者の初発例増加も原因の1つと考えられる。また近年UC患者に対して保険適応となった新規治療薬(タクロリムスやインフリキシマブ)は、免疫系に作用し薬効を発揮するが、種々の併存疾患を有し諸臓器の機能低下や免疫機能低下のある高齢者への投与は、有効性・安全性などについて未知の部分が多い。今回我々は、高齢者(65歳以上)のUC患者で、重症度別の治療法、併存疾患の有無と治療に与えた影響などについて検討した。【方法】2006年4月~2011年3月までに名古屋市立大学病院で治療を受けた高齢者(65歳以上)のUC患者32名(男/女=21/11、平均年齢73.9歳、平均罹患年数14.9年)について重症度、治療法、併存疾患、寛解率(mDAI score)、大腸内視鏡所見(Baron分類)および安全性などについて検討した。【結果】1. 臨床的重症度が中等症・重症の患者は6例(男/女=5/1、平均年齢72.8歳、平均罹患年数7.2年)であり、全例発病から10年以内であった。6例はすべてステロイド(PSL)依存例であり、3例はタクロリムス+顆粒球・単球吸着療法(GMA)、1例はタクロリムス、1例はPSL増量+GMA、1例はアダリムマブ、で加療し臨床的に寛解となり、mDAI score平均値は治療前7.0→治療3か月後3.0、大腸内視鏡所見(Baron分類)平均値は治療前2.7→治療3か月後1.4となった。2. 軽症の患者は26例(男/女=16/10、平均年齢74.1歳、平均罹患年数16.7年)であり、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤投与で臨床的に寛解維持が可能であった。3. 重篤な併存疾患は、悪性腫瘍7例、心疾患2例、脳疾患2例、肺疾患1例であり、すべて軽症例での合併であった。4. 薬物の副作用は、アザチオプリンで白血球減少が1例あり投薬を中止した。【結論】高齢者のUC患者の治療は併存疾患について考慮する必要があるが、重篤な併存疾患が無ければUCの臨床的悪化が認められた場合、タクロリムスなどでの積極的な加療が可能であり有効であると考えられた。
索引用語 潰瘍性大腸炎, タクロリムス