セッション情報 ワークショップ13(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会・消化吸収学会合同)

高齢者における消化器疾患の診断と治療

タイトル 内W13-6追1:

当院における高齢者に対する大腸ESDの現状

演者 玉井 尚人(国立がん研究センター中央病院・消化管内視鏡科)
共同演者 坂本 琢(国立がん研究センター中央病院・消化管内視鏡科), 斎藤 豊(国立がん研究センター中央病院・消化管内視鏡科)
抄録 【目的】 当院では, 拡大内視鏡を用いた術前内視鏡診断にてcM-SM微小浸潤癌までの病変と診断し, 一括切除が妥当であると判断した場合には, 年齢制限を設けず高齢者に対しても大腸ESDを施行している. 本検討の目的は, 当院における高齢者に対する大腸ESDの現状を明らかにすることである. 【方法】 1998年2月から2010年12月までに当院で大腸ESDを施行した症例を75歳以上の高齢者群と75歳未満の非高齢者群の2群に分け, 切除腫瘍径, ESD施行時間, 偶発症発生率, 一括切除率, 内視鏡的治癒切除率, クリニカルパス逸脱率を比較検討した. また, 組織学的に治癒切除が得られなかった症例の転帰についても調査した. 【成績】 大腸ESD総施行例は637例で, 21.0% (134/637) が高齢者群, 79.0% (503/637) が非高齢者群であった. 両群で切除腫瘍径, 施行時間, 偶発症発生率, 一括切除率, 内視鏡的治癒切除率, クリニカルパス逸脱率に有意差はなかった. また, 非治癒切除と判定された症例は, 高齢者群で14.2% (19/134) , 非高齢者群で13.9% (70/503) で同様に有意差は認めなかった. 追跡可能であった高齢者群非治癒切除症例で, 追加外科切除が施行された症例は31.3% (5/16) であった. 一方, 追跡可能であった非高齢者群非治癒切除例で追加治療が施行された症例は73.1% (49/67) であり, 追加治療が施行された症例は高齢者群で有意に少なかった. 高齢者群非治癒切除症例において, 経過観察が選択された最も多い理由は「患者・家族の希望」であった. 両群の経過観察症例で経過観察中 (中央値20か月) に局所再発・遺残病変や遠隔転移は認めていない. 【結論】 75歳以上の高齢者群においても, 大腸ESDの治療成績は非高齢者群と同等であった. しかしながら, 高齢者の非治癒切除例では, 経過観察が選択されることが多く, これらの症例の経過追跡の集積が高齢者のESD適応を考慮する上で必要であると考えられた.
索引用語 大腸ESD, 高齢者