セッション情報 ワークショップ13(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会・消化吸収学会合同)

高齢者における消化器疾患の診断と治療

タイトル 外W13-7:

高齢者食道癌に対する外科的切除の治療成績の変遷と意義

演者 森田 勝(九州大大学院・消化器・総合外科学)
共同演者 掛地 吉弘(九州大大学院・消化器・総合外科学), 前原 喜彦(九州大大学院・消化器・総合外科学)
抄録 【目的】75歳以上の高齢者、とくに80歳以上の超高齢者に対する食道切除術の意義を明らかにする目的で、合併症、予後を年齢別に比較し、さらに年代別の治療成績の推移を検討した。【方法】食道癌切除例1106例を、I群(74歳以下)990例、II群(75-79歳)93例、III群(80歳以上)23例にわけ治療成績を比較した。II, III群では心・肺機能正常を手術適応とし、リスクを有する場合、二期手術を行っている。とくにIII群では、PSを重視している。さらに、前期(’64~’89年、n=451)、後期(’90~’09年、n=655)にて変遷を検討した。また、多変量解析にて、合併症、再発死亡に関わる独立因子を検討した(因子:年齢、性、部位、T、N、再建臓器、経路、D、根治度、術前治療、手術時期)。【結果】術後合併症:各群40, 39, 26%と差はなかった。さらに、前後期ではI群49→34%, II群51→33%, III群38→20 %と後期で減少し、なかでも肺合併症はI群26→11%、II群34→14% , III群38→0%と各群で減少していた(p<0.05)。合併症発生の独立因子は、胸骨前または後経路、不完全切除、術前照射、前期であったが、年齢は有意な因子ではなかった。前後期の術死は、I群4.6→0.5 %, II群6.9→1.6%, III群 12.5→0%と各群で減少した。予後:各群の5年全生存率は34, 27, 7 %であったが(I-II群間P<0.05)、原病生存率では差はなかった。前後期の5年全生存率はII群10→36%(P<0.05), III群0→14 %と改善していた。再発死亡に関わる独立因子は、T3以上、N(+)、D2、前期であったが、年齢は有意な因子ではなかった。【考察】高齢者、超高齢者の食道切除は合併症発生、根治性の面で対照群と差はなく、特に後期では致死的な肺合併症が減少するとともに予後も改善した。超高齢者においても食道切除は、厳密な手術適応と二期手術等による侵襲の軽減により、選択しうる治療法の一つである。
索引用語 食道癌, 高齢者