抄録 |
【背景】胃癌患者の高齢化の傾向は明らかであるものの、本邦における進行胃癌に対する臨床試験 (JCOG9912, SPIRITS) では75歳以上の後期高齢者が除かれてきたため、高齢者胃癌に対する化学療法の適応・効果・安全性は明らかではない。【目的】75歳以上の後期高齢者進行胃癌の化学療法について、当院での現況を明らかにする。【方法】2000年から2010年1月までの間に当院において化学療法を開始した胃癌症例929例のうち, PS0-2であった892例を75歳未満(A群)794例、75歳以上(B群)98例の2群に分け検討した。【成績】A群の年齢中央値は62歳(範囲27-74), B群は78歳(範囲75-86)であった。両群の患者背景ではB群において男性の割合がやや多かった(65% vs. 76%) 以外は差を認めなかった。一次治療における併用療法割合がA群に多い傾向があったが(49% vs. 32%)、二次治療 (72% vs. 66%), 三次治療の導入割合 (37% vs. 29%)は差を認めなかった。全治療期間における各治療薬剤の使用割合では、platinum(54% vs. 36%) がA群で多かったが、その他は差を認めなかった (FU 92% vs. 87%, platinum 51% vs. 50%, taxanes 63% vs. 60%, irinotecan 38% vs. 32%)。一次治療におけるTTF(4.3 vs.3.8ヶ月; HR=1.00)とOS (12.7 vs 13.1ヶ月; HR=1.07)は同等であり、これは他の背景因子と多変量解析にて検討しても同様の結果であった。一次治療をFU+platinum とS1単独に限定したOSの比較ではA群(15 vs.12.7ヶ月)・B群(18.9 vs. 14ヶ月)いずれもプラチナ併用で優れていた。B群のFU+platinum(n=19)投与状況は、総コース数中央値4(1-8)、初回減量2例、中途減量14例、毒性中止35%であった。治療関連死亡は認めなかった。 【結論】当院における後期高齢者は, 非高齢者と比較しその治療成績は同等であった。主要臓器機能や合併症の十分な評価が必要であるが、後期高齢者においても, 非高齢者と同様の化学療法が延命効果のあることが示唆された。 |