セッション情報 ワークショップ13(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会・消化吸収学会合同)

高齢者における消化器疾患の診断と治療

タイトル 消W13-11追3:

高齢者における自己免疫性肝疾患の特徴

演者 三神 昌樹(帝京大・内科)
共同演者 田中 篤(帝京大・内科), 滝川 一(帝京大・内科)
抄録 【目的】自己免疫性肝疾患は中年女性に好発することが知られているが、近年高齢者における初発例が増加している。今回われわれは、原発性胆汁性肝硬変(PBC)および自己免疫性肝炎(AIH)において、診断時年齢により若年発症例と高齢発症例に分け、その臨床的特徴を比較検討した。【方法】当院において経過観察されているPBC症例85例(年齢59.9±12.0歳、男性/女性9例/76例)、AIH例43例(年齢58.4±15.0歳、男性/女性5例/38例)を対象とした。PBC・AIHそれぞれを診断時年齢65歳未満(若年)・65歳以上(高齢)の2群に分け、それぞれの診断時及び最終転帰確認時の状況、治療内容および治療反応性、発癌について検討し、PBCについては発症に関与する遺伝子多型についても比較検討した。【成績】PBCでは若年・高齢の症例はそれぞれ55例(男性/女性5例/50例)・30例(男性/女性4例/26例)であった。若年/高齢それぞれにおける診断時血液検査値(平均)は、AST 61/50、ALP 567/670、Alb 4.0/3.9であり、有意差はなかった。診断時すでに肝硬変だった症例は若年で6例(11%)、高齢で7例(23%)だった。日本人PBCの発症への関与が示唆されているIKZF3遺伝子多型のマイナーアレル頻度は若年0.24、高齢0.30であり、有意差はなかった。平均観察期間は若年6.1年・高齢3.1年、最終転帰確認時では若年で3例・高齢で1例死亡していたが肝関連死は若年の1例のみだった。一方、AIHでは若年・高齢それぞれ25例(男性/女性2例/23例)・18例(男性/女性3例/15例)、診断時のALTは152/136、Alb 4.1/3.8で、やはり有意差はなかった。診断時すでに肝硬変だった症例は若年で7例(28%)、高齢で6例(33%)だった。ステロイドはそれぞれ20例(80%)、10例(56%)で投与されており、平均観察期間は若年10.8年・高齢5.8年、死亡例は高齢で肝関連死1例をみとめた。【結論】PBC/AIHとも高齢発症例では組織学的進行例が多い傾向にあったが、血液検査値、治療反応性及び予後は若年発症例と比較し大きな差異はみられなかった。
索引用語 PBC, AIH