セッション情報 ワークショップ13(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会・消化吸収学会合同)

高齢者における消化器疾患の診断と治療

タイトル 肝W13-12:

高齢肝細胞癌のガイドライン推奨治療法との一致率と予後

演者 木岡 清英(大阪市立総合医療センター・肝臓内科)
共同演者 中井 隆志(大阪市立総合医療センター・肝臓内科), 川崎 靖子(大阪市立総合医療センター・肝臓内科)
抄録 【目的】肝癌診療ガイドラインでは肝細胞癌の治療法を肝障害度と腫瘍数・腫瘍径で定めており、年齢は考慮されていない。当院も年齢は考慮せず、切除可能なものは肝切除、ただし、腫瘍径3cm以下・腫瘍数3個以内で、腫瘍の周りに5mm程度のsafety marginを確保できる場合は経皮的局所治療(局所療法)の適応とし、それ以外に関しては可能な限り肝動脈塞栓術(TAE)を行うようにしている。今回、この治療方針で治療した高齢肝細胞癌のガイドライン推奨治療法(以下、GL)との一致率と予後を検討した。【方法】当院で初回治療を行った肝細胞癌のうち、肝外転移例と脈管侵襲例を除いた1240例(肝切除:437例、TAE+局所療法:330例、局所療法:287例、TAE:143例、その他:43例)を対象とした。これらを80歳以上(89例)、70~79歳 (457例)、70歳未満(694例)の3群に分けて、各群の治療法のGL一致率と予後を検討した。【成績】80歳以上の予後は有意に70~79歳、70歳未満よりも不良であった。GL一致率は全体では66%で、80歳以上:57%、70~79歳:67%、70歳未満:67%であったが、全体および各年代ともGL一致・不一致で予後に差はなかった。さらにガイドラインに従い、肝障害度と腫瘍数・腫瘍径で6群に分けて検討すると、肝障害度AB・腫瘍数単発(664例)の予後は80歳以上が有意に不良で、GL一致率も低率であったが、GL一致・不一致で予後に差はなかった。肝障害度AB・腫瘍数2-3個・腫瘍径3cm以内(215例)の予後は年代間で差はなく、全体ではGL一致(90%)の方が予後良好であった。肝障害度AB・腫瘍数2-3個・腫瘍径3cm超(113例)の予後は80歳以上が有意に不良であったが、GL一致・不一致で予後に差はなかった。肝障害度AB・腫瘍数4個以上(159例)の予後は年代間で差はなく、全体ではGL一致(74%)の方が予後不良であった。肝障害度C(89例)では肝移植例は1例も無く、緩和ケアも1例のみで、年代間で予後に差はなかった。【結論】80歳以上の予後は不良で、GL一致率も低率であったが、GL一致・不一致間で予後に差はなかった。
索引用語 肝細胞癌, ガイドライン