セッション情報 ワークショップ13(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会・消化吸収学会合同)

高齢者における消化器疾患の診断と治療

タイトル 外W13-13追4:

高齢者(75歳以上)における肝細胞癌切除術の意義

演者 谷合 信彦(日本医大・外科)
共同演者 吉田 寛(日本医大多摩永山病院・外科), 内田 英二(日本医大・外科)
抄録 【目的】肝細胞癌(HCC)の肝切除術において一般的な手術適応基準には年齢因子がないが,それでよいのか?肝移植時に高齢者ドナーはレシピエントの予後が不良であることから高齢者の肝切除術において肝再生は良好なのか?など高齢者におけるHCC肝切除術において未解決な問題が多い.今回,75歳以上HCC症例を検討し,安全かつ有効な治療法としての肝切除術の意義を検討した.【方法】1990~2010年に教室におけるHCC肝切除術416例のうち75歳以上63例(15.1%)を対象とした.75歳未満352例を対照群として,累積生存率,累積無再発生存率,術後合併症を比較した.さらに対象群の予後因子を検討した.【成績】対象群の内訳は男性39例,女性24例,平均年齢76.0歳(75~87)であった.Child-Pugh分類A 56例,B 7例,C 0例,Stageは1-4例,2-29例,3-19例,4-9例であった.多発:単発 20:43,腫瘍径2cm以上:以下 9:54, 脈管侵襲を12例に認めた.手術は系統的切除32例,部分切除31例で,葉切除以上12例(19.0%)で対照群に比し有意に少なかった.手術時間312分,術中出血量1300mlであった.術死を4例(6.3%)に認めた.対象群の累積生存率は3年56.2%,5年40.2%,対照群は3年63.4%,5年46.6%,無再発生存率はそれぞれ3年34.9%,5年34.9%,3年30.8%,5年21.5%でともに両群間に差はなかった.術後合併症では肺炎5例(7.9%),SSI 8例(12.7%)が対照群に比し有意に多かった.脈管侵襲の有無(p=0.0008),Child分類(p=0.010), LCの有無(p=0.040), AFP(p=0.013),術中出血量(p=0.001)が有意な予後因子であった.【結論】高齢者HCCの肝切除術は若年者のそれと予後に差はなかった.しかし,有意に縮小手術が選択されており,肝予備能不良例や脈管侵襲例では予後不良であった.術中出血量を減少させることが予後改善因子であり,適切な症例・術式選択と的確な手術,術後管理を行うことで 安全かつ有効な治療法であると思われる.
索引用語 肝細胞癌, 肝切除術