抄録 |
【目的】ERCPでは胆管への選択的深部挿管が困難な症例が存在する.深部挿管困難例では処置時間も長くなるが,高齢者ではできる限り短時間での治療の完遂が要求され,偶発症を防止する工夫も必要である.今回,我々は当院でのERCPの治療成績,合併症として膵炎の予防と対策について検討したため報告する.【対象と方法】2007年4月から2010年9月までにERCPを施行した692回のうち乳頭未処置の初回ERCP 442症例(男女比288:154,平均年齢67.3歳(18歳-91歳))を対象とした.そのうち65歳以上の高齢者は288例であった.通常挿管の後,胆管深部挿管困難例に対しては膵管ガイドワイヤー法(GW),プレカット法(PC)の順に深部挿管を試みた.深部挿管に長時間を要した症例では膵炎防止を目的として,5Fr片側フラップ型の自然脱落型膵管ステントを留置した.また,ERCP後膵炎の定義はCottonのCriteriaに準じた.【成績】ERCPでの胆管深部挿管困難例は442例中GW(24例),PC(11例)の合計35例であった.これらの方法を順次行う事により,不穏等のため検査継続が不可能となり検査を中断した3例を除いて胆管深部挿管に成功した.64歳以下の若年者では通常挿管時の膵炎発症率3/148(2.03%)に比較して,挿管困難例では1/6(16.7%)[GW;1/4(25.0%),PC;0/2(0%)]であった.65歳以上の高齢者では,通常挿管時の膵炎発症率4/259(1.54%)に比較して,挿管困難例では5/29(17.2%)[GW;4/20(20.0%),PC;1/9(11.1%)]であった.深部挿管困難例の中で膵管ステント留置群(S群)では非留置群(N群)に比較して,GW[S;1/9(11.1%),N;4/15(26.7%)],PC[S;0/3(0%),N;1/8(12.5%)]ともに膵炎の発症率は低下する傾向が見られた.【結語】65歳以上の高齢者では通常挿管時のERCP後膵炎の発症率は若年者に比較して低下する傾向が見られた.しかし,高齢者でも胆管深部挿管困難例では高率に術後膵炎を合併しており,膵管ステント等による膵炎発症防止に努める必要があると考えられた. |