セッション情報 ワークショップ13(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会・消化吸収学会合同)

高齢者における消化器疾患の診断と治療

タイトル 消W13-18:

高齢者の慢性膵炎の診断と治療

演者 齋藤 格(がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科)
共同演者 神澤 輝実(がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科), 江川 直人(がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科)
抄録 (目的)高齢者の慢性膵炎の特徴を明らかにし、診療指針を作成する。(対象・方法)自己免疫膵炎65例と慢性膵炎確診212例を対象とし、診断時の年齢により高齢者(65歳以上)と非高齢者(65歳未満)に分けて臨床像を比較検討した。(結果)(1) 自己免疫性膵炎は、高齢者40例(男女比1:0.29)と非高齢者25例(1:0.47)で高齢の男性に多かった。高齢者と非高齢者で、び慢性膵腫大(高齢者42%、非高齢者44%)、黄疸(60%、56%)、血中IgG4値(499.7±577.9 mg/dl、396.1±368.4 mg/dl)に差を認めなかったが、多くの例で膵臓癌との鑑別が必要であった。(2) 慢性膵炎 1.高齢者63例(男女比1:0.31)と非高齢者149例(1:0.08)で、高齢者で女性の比率が高かった(p=0.04)。2.成因は高齢者はアルコール性46%特発性35%で、非高齢者(91%と7%)に比べアルコール性が少なく特発性が多かった(p<0.01)。 3.腹痛は高齢者22%、非高齢者64%で、高齢者で無痛性が多かった(p<0.01)。黄疸(高齢者3%、非高齢者9%)と膵石(高齢者54%、非高齢者60%)の頻度に差を認めなかった。糖尿病は高齢者(24%)は非高齢者(56%)より少なかった(p<0.01)。4.慢性膵炎に対する外科手術は高齢者(6%)で非高齢者(24%)より少なかった(p=0.02)。5.悪性腫瘍は高齢者23例(36%、31病巣) 、非高齢者23例(15%、29病巣)に合併し、胃癌、大腸癌、肺癌、食道癌などの多くは内視鏡的・外科治療により治癒可能であった。膵臓癌は高齢者6例、非高齢者3例に合併しいずれも進行癌で癌死した。6.飲酒継続例のQOLは両群とも不良であった。経過観察中高齢者19例と非高齢者35例が死亡した。死因は悪性腫瘍が最多であったが、高齢者は栄養不良、感染、血管障害が多かった。(結語)高齢者の膵腫瘤では、自己免疫性膵炎も念頭に置いて検査する必要がある。高齢者の慢性膵炎では女性の比率が高くなり、特発性と無痛性が多く、糖尿病が少なかった。高齢者の慢性膵炎では、禁酒、膵臓癌を含めた悪性腫瘍の合併を念頭に置いたフォローアップ、十分な栄養と消化酵素剤の投与が必要である。
索引用語 高齢者, 慢性膵炎