セッション情報 ワークショップ14(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

エピジェネティクスと消化器癌

タイトル 消W14-1:

肝炎ウイルスによるエピジェネティック異常の誘発機構

演者 近藤 豊(愛知県がんセンター研究所・分子腫瘍学部DELIMITERJSTさきがけ)
共同演者 田中 靖人(名古屋市立大大学院・ウイルス学)
抄録 肝細胞がんの発生は、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)感染による慢性炎症の経過中に蓄積したエピジェネティクス異常が原因の一つと考えられている。したがって、HBV、HCV感染後のエピジェネティクス異常の誘導機序および発がんとの関連を明らかにすることは、肝細胞がんの発がん予防および発がんリスクの予測の上から重要な課題である。本研究では、ヒト肝細胞置換マウスの肝炎ウイルス感染モデルを用いて、DNAメチル化異常の誘導機序の解析を試みた。ヒト肝細胞置換マウスにHBVおよびHCVを感染させた後、経時的に肝組織からDNAを抽出し、マイクロアレイを用いて、プロモーター領域のDNAメチル化異常を網羅的に解析した。さらにマウスモデルに観察されたDNAメチル化プロファイルと、実際の肝細胞がん症例のDNAメチル化異常の関連を比較検討した。ヒト肝細胞置換マウスでは、B型肝炎ウイルス感染後(HBV感染マウス、n=13)に、経時的にDNAメチル化遺伝子数は増加し、平均164遺伝子(2.7%)が高メチル化となった。一方、C型肝炎ウイルス感染(HCV感染マウス、n=14)では、感染早期から高メチル化遺伝子が増加し、平均307遺伝子(5.0%)がメチル化していた。これらの遺伝子の約50%は、ヒト肝細胞がん症例でもメチル化していた。HBV感染マウスでメチル化した遺伝子のうち、約80%はHCV感染マウスでもメチル化しており、さらにDNAメチル化異常は、ウイルスが感染しないマウス由来の肝組織でも認められた。ウイルス感染後には、マウス由来のマクロファージやNK細胞から産生されるサイトカインが上昇しており、また感染肝組織内で活性酸素の産生亢進が観察された。本解析から、HBV、HCVウイルス感染後、肝組織内の感染細胞・非感染細胞の両者で炎症を介したDNAメチル化を誘導する機序が存在すると考えた。
索引用語 DNAメチル化, 肝細胞癌