セッション情報 ワークショップ14(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

エピジェネティクスと消化器癌

タイトル 消W14-2:

epigenetic therapy in clinical tumors

演者 小林 幸夫(国立がん研究センター中央病院・血液腫瘍科)
共同演者
抄録 エピジェネティックスはDNA配列の変化を伴わずに細胞の分裂増殖,分化を及ぼし,かつ,次世代へ引き継がれる機序とされる.腫瘍化に関係した一つの機序はDNAのメチル化であり,脱メチル化を惹起して抗腫瘍活性を発揮する薬剤が開発されるのは当然の成り行きであった.造血器腫瘍ではdecitabine, azacytidineが欧米ではすでに使用されており,後者は日本でも使用可能となった.In vivoでも腫瘍抑制遺伝子をはじめとする遺伝子の脱メチル化が実際に生じて,そのことが抗腫瘍活性となっているのかどうかは必ずしも明らかではないが,第3相試験の結果は,これら薬剤が骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome, MDS)に対して有用であることをはっきりと示している.今一つ,エピゲネティックスが関連していると考えられる機序はヒストンのアセチル化およびメチル化である.ヒストン脱アセチル化阻害薬であるSuberoylanilide Hydroxamic Acid (SAHA)は,それまで薬剤がなかった皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)に対して初めて有効であることが示された.これら3種類の薬剤,ことに脱メチル化薬は近年腫瘍化の分子基盤が解明されることで再度脚光を浴びた治療であり,1980年代に分化誘導療法として細胞株で検討された経緯があり,いわば再発見された治療法とも言える.本ワークショップでは,造血器腫瘍の治療分野で進んでいるエピゲネティック薬剤の開発状況と固形腫瘍治療への可能性について述べる.
索引用語 エピゲネティックス, 低メチル化薬