セッション情報 ワークショップ14(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

エピジェネティクスと消化器癌

タイトル 消W14-4:

胃未分化癌発癌母地におけるDNAメチル化異常

演者 吉田 岳市(和歌山県立医大・2内科)
共同演者 前北 隆雄(和歌山県立医大・2内科), 加藤 順(和歌山県立医大・2内科)
抄録 【目的】胃癌でみられるDNAメチル化異常の一部はHelicobacter pylori(Hp)感染によって胃粘膜に誘発される。われわれはHp感染による萎縮性胃炎において、胃粘膜のDNAメチル化異常の蓄積が分化型胃癌発癌リスクと相関することを示してきた。一方,萎縮を背景としない未分化型胃癌発癌のDNAメチル化との関係についての詳細は不明である。最近われわれは、胃粘膜萎縮を評価する血清PG値陰性群のなかで、特定の集団(γ群:PG I > 70 ng/mL かつ PG I/II ratio ≦ 3.0)はβ群(PG I > 70 ng/mL かつ PG I/II ratio > 3.0)やα群(PG I ≦ 70 ng/mL かつ PG I/II ratio > 3.0)より未分化型胃発がん発生率が高いことを報告した(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2008: 838-45)。そこで、今回、胃粘膜DNAメチル化異常の蓄積と未分化型胃癌発癌リスクについて検討した。【方法】検体はPG法陰性の健常者56名 (男29 女27: Hp陰性34 陽性22)の内視鏡検査の際に胃前庭部より採取した。DNAを抽出し、分化型胃癌発癌において高メチル化を示す遺伝子(TM, HAND1, FLNc)のプロモーター領域のCpGアイランドと低メチル化を示す繰り返し領域(Alu)のメチル化レベルをreal-time MSP法とPyrosequencing法によりそれぞれ解析した。対象をα、β、γ群に分類し、それぞれのメチル化レベルを比較した。【成績】遺伝子プロモーター領域のメチル化レベルはγ群とβ群でα群よりそれぞれ有意に高かった(TM:16.3±9.9, 7.4±10.0 vs 2.6±6.0, P<0.05, P<0.05; HAND1:6.5±4.7, 6.9±6.9 vs 2.4±4.9, P=0.05, P<0.05; FLNc: 1.1±0.7, 1.6±1.6 vs 0.4±1.0, P=0.10, P<0.05)。繰り返し領域のメチル化レベルはpromoter領域とは逆にγ群とβ群でα群よりそれぞれ有意に低かった(43.6±3.0, 44.9±4.6 vs 48.5±3.0, P<0.05, P<0.05)。【結論】DNAメチル化異常は胃粘膜の炎症の活動度が高いと考えられるβ群、γ群で顕著であり、萎縮性胃炎が軽度な胃粘膜の未分化型胃癌発癌のリスクと関連しており、分化型胃癌同様癌化に深く関与していると考えられた。
索引用語 血清ペプシノゲン, DNAメチル化