セッション情報 |
ワークショップ14(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)
エピジェネティクスと消化器癌
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タイトル |
消W14-5:大腸癌におけるIGF2 DMRのメチル化レベルの低下と臨床病理学・分子生物学的因子との関係
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演者 |
能正 勝彦(札幌医大・1内科) |
共同演者 |
馬場 祥史(熊本大大学院・消化器外科学), 篠村 恭久(札幌医大・1内科) |
抄録 |
insulin-like growth factor 2(IGF2)は本来、父方Alleleのみで発現するがloss of imprinting(LOI)等の機序により、母方Alleleにおいても発現する。その結果、過剰発現したIGF2はその受容体であるIGF-I receptor(IGF-IR)と結合しやすくなり、IGFシグナルの下流にあるPI3K/AKTやMAPKの賦活化がおこり、抗アポトーシスの誘導、細胞増殖が促進される。またIGF2のLOIは大腸腫瘍の危険因子であり、その調節にIGF2 differentially methylated region (DMR) の低メチル化が大きく関わっていることも明らかになっている。今回、我々は1000例を超える大腸癌を用いてIGF2 DMRのメチル化レベルを測定し、それを標的とした個別化治療の可能性を検討した。【方法】対象は外科的に切除された大腸癌症例。pyrosequence technologyでIGF2 DMRのメチル化レベルを解析。またそのメチル化レベルとgenome-wide hypomethylationの指標であるLINE-1のメチル化レベル、MSI、CIMP、遺伝子変異(KRAS、BRAF、PIK3CA)との関係。また臨床病理学的因子との相関も検討した。【成績】IGF2 DMRのメチル化レベルは同一症例の正常粘膜と癌部で比較したところ癌部で有意に(p<0.0001)低下していた。多変量解析でそのメチル化レベルの低下と臨床病理学・分子生物学的因子との相関を検討したところLINE-1の低メチル化(p<0.0001)、KRAS変異(p<0.01)と有意な相関を認めた。またIGF2 DMRのメチル化レベルの低下は不良な予後とも有意に(log-rank p<0.001、多変量解析 p<0.01)相関した。【結論】IGF2 DMRのメチル化レベルの低下はgenome-wide hypomethylation、KRAS変異と相関を認め、また大腸癌の独立した予後不良因子であることも明らかになった。そのメチル化レベルの低下によってIGF2 LOIをきたす大腸癌には受容体であるIGF-IRを標的にした個別化治療が有用の可能性があり、臨床応用にむけて、更なる解明が期待される。 |
索引用語 |
IGF2, colorectal cancer |