抄録 |
【目的】鋸歯状腫瘍がGpG island methylator phenotype (CIMP)陽性大腸癌の前癌病変である可能性が報告されている.我々は,非鋸歯状腫瘍について肉眼型別にDNAメチル化を中心に遺伝子異常のプロファイリングを行った.【方法】当院で内視鏡的あるいは外科的に切除された大腸非鋸歯状腫瘍106病変 (粘膜内病変91病変 [高異型度腫瘍27病変,低異型度腫瘍64病変],粘膜下層癌15病変)を対象とし,肉眼形態から平坦・陥凹型(flat-depressed neoplasia, FDN)と隆起型腫瘍 (polypoid neoplasia, PN)に分類し検討を行った.bisulfite-pyrosequencing法を用いて 8 遺伝子(MINT1, MINT2, MINT31, MLH1, p16, MGMT, SFRP1, LINE1) についてDNAメチル化解析を行い,さらにKRAS・BRAF・p53遺伝子変異及びmicrosatellite instability (MSI)の有無についても検討を行った.【成績】最初に粘膜内病変91病変について検討した.CIMPの頻度については両群間で有意差を認めなかったが(PN, 7% vs. FDN, 4%),MGMTメチル化の頻度はFDN群に比べPN群において高率であり (22%, 10/45 vs. 7%, 3/41; P=0.07),MGMTメチル化を認めたPN群10病変中5病変(50%)でKRAS変異を認めた.さらに,SFRP1のDNAメチル化レベルもFDN群に比べPN群において高かった(43.9% vs. 49%, P=0.04).一方,LINE1 assayによるglobal hypomethylationについての検討であるが,PN・FDN群共に大腸粘膜に比べ有意に低メチルであった(PN, 62.1% or FDN, 61.5% vs. 大腸粘膜, 64.6%: P<0.01).また,KRAS変異はFDN群(7%, 3/43)に比べPN群(33%, 16/48)で高率に認められたが (P<0.01), p53変異はFDN群で12% (5/43)とPN群 の0% (0/47)と比べ高率であった (P=0.02). BRAF変異とMSIについては両群間で有意差を認めなかった.また, 粘膜下層癌15病変においても類似の遺伝子学的特徴を示した.【結論】非鋸歯状腫瘍において肉眼型別に異なる遺伝子異常を介した発癌過程が存在する可能性が推定され,本検討結果は診断・治療戦略を考える上で重要な所見と思われる. |