セッション情報 ワークショップ14(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

エピジェネティクスと消化器癌

タイトル 消W14-7:

大腸の腫瘍および炎症性疾患におけるDNAメチル化異常

演者 前田 修(名古屋大大学院・消化器内科学DELIMITER名古屋大大学院・消化器疾患先端研究)
共同演者 安藤 貴文(名古屋大大学院・消化器内科学), 後藤 秀実(名古屋大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】DNAメチル化異常は加齢、炎症、腫瘍において重要な役割をしていると考えられる。大腸疾患におけるメチル化の意義を解析し、臨床応用の可能性を検討するために、大腸癌細胞株、大腸内視鏡生検検体、便中DNAのメチル化解析を行った。【方法】大腸癌細胞株38検体および正常大腸11検体を用いたマイクロアレイによるメチル化解析を行い、大腸癌細胞株で高頻度に高メチル化を認める遺伝子および低メチル化を認める遺伝子を抽出した。大腸内視鏡生検を用いて、パイロシークエンス法によりメチル化の定量を行い、またゲノム全体のメチル化を反映するLINE-1のメチル化も評価した。さらに便中DNAを用いたreal-time PCRによるメチル化の検出を試みた。【結果】マイクロアレイで同定された大腸癌細胞株において高頻度にメチル化を認める遺伝子(FBN1、SLC18A3、COL4A2、PPP1R16B)は、大腸癌と大腸腺腫においてメチル化を認め、SLC18A3のメチル化は正常粘膜において年齢との相関を認めた。また潰瘍性大腸炎では罹患期間とSLC18A3、COL4A2、ESR1のメチル化に相関を認めた。さらに大腸癌および潰瘍性大腸炎患者の便中DNAのメチル化を検討し、大腸癌患者の便からFBN1のメチル化を同定しえた。一方、マイクロアレイで低メチル化とされた遺伝子(LAMB1、GIPC2、MMP14)のうち、LAMB1は大腸腺腫において、GIPC2は大腸癌において正常大腸粘膜よりも低メチル化を示した。GIPC2は正常粘膜における年齢依存性のメチル化を認め、LAMB1のメチル化は潰瘍性大腸炎の罹病期間と相関を認めた。【結論】大腸腫瘍において高頻度にメチル化を示す遺伝子には、年齢や炎症との相関を示すものと、腫瘍特異的なものがあり、診断への応用の可能性が示唆された。大腸腫瘍において正常粘膜よりも低いメチル化を示す遺伝子もまた、病態との関連が示唆された。
索引用語 メチル化, 大腸