セッション情報 ワークショップ14(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

エピジェネティクスと消化器癌

タイトル 肝W14-8:

C型慢性肝炎組織における癌抑制遺伝子メチル化と肝発癌

演者 西田 直生志(京都大・消化器内科)
共同演者
抄録 【目的】癌抑制遺伝子(TSGs)プロモーターのメチル化は、その発現低下を介して発癌に寄与すると考えられる。我々は発癌早期の腫瘍(2cm以下の高分化肝癌)においても高レベルのメチル化が認められるTSGs群を報告してきた。今回は、これらの異常メチル化が肝発癌のdriverであることを示すため、慢性C型肝炎の生検組織において、これらの異常メチル化の存在とその後の発癌との関連を検討した。【方法】1994年~2002年にかけて肝生検を施行した124例の慢性C型肝炎組織 (F0-1;44例、F2;37例、F3;21例, F4;22例)を用い、CDKN2A、APC、GSTP1のプロモーターメチル化の有無をMethyLight法にて検討し、その後の発癌イベントとの関連をKaplan-Meier法にて解析した。なお経過中にIFN治療にてSVRが得られた例はその時点で打ち切り例とした。さらに各メチル化と関連する因子を検討するため、それらの組織で酸化ストレスマーカー(8-OHdG)の免疫染色、鉄染色を施行し、年齢、性、Fステージとともに多変量解析を施行した。なお8-OHdG免疫染色、鉄染色は陽性細胞の比率により3段階に分類した。【成績】disease-free survivalをlog-rank testで比較した結果、 CDKN2A、APCのメチル化有り例では有意に発癌までの期間が短く(CDKN2A; p = 0.0002、APC; p = 0.0085)、またGSTP1のメチル化例も早期に発癌する傾向が認められた(p = 0.1722)。これらのメチル化の存在に寄与する因子を、年齢、性別、Fステージ、8-OHdG染色、鉄染色を共変量として多変量解析したところ、8-OHdG強陽性がCDKN2A、APCのメチル化出現に独立して寄与する因子であった。【結論】今回検討したTSGはいずれも肝発癌早期に高レベルのメチル化が観察されるものであるが、特にCDKN2A、APCのメチル化陽性例は発癌までの期間が短く、このイベントは発癌のドライバーであると考えられる。さらにC型肝炎組織において、酸化ストレスがTSGメチル化の誘因である可能性が示唆された。
索引用語 C型慢性肝炎, メチル化