セッション情報 ワークショップ14(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

エピジェネティクスと消化器癌

タイトル 肝W14-9:

DNAメチル化によるSTAT5a発現低下が肝発癌に及ぼす影響

演者 法水 淳(大阪大・消化器内科)
共同演者 巽 智秀(大阪大・消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大・消化器内科)
抄録 【目的】我々は肝特異的STAT5a/b欠失マウスがCoCl2刺激下において肝癌を引き起こすことを報告した(JEM 2009)。今回、STAT5a及び5bの発現をヒト慢性肝疾患、肝癌組織において検討した。更にin vitroにおいてこれらの分子の発現が細胞増殖にどのような影響を及ぼすか、またこれらの発現調節がどのように行われているかの検討を行ったのでここに報告する。【方法・成績】ヒト肝癌組織29症例における癌部、非癌部のSTAT5a及び5bの発現をWestern blot及びRT-PCR にて検討した。非癌部に比し癌部においてSTAT5a及びSTAT5b発現の低下を認めた。更に慢性肝炎 (18例)、肝硬変 (9例)、肝癌 (29例) と病変が進行するにつれSTAT5a/b発現低下を認めた。STAT5bに関しては細胞増殖を正に制御するとの報告が多数存在するため、発癌に関しての今後の検討ではSTAT5aに注目しこれらの発現低下がどのような影響を与えるかに関して検討を行った。STAT5aKO 細胞ではWST assayにて細胞増殖の亢進を認め、細胞周期の検討により5aKOではG2-M期の増加が観察された。細胞周期に影響を及ぼす分子を検討したところ、cyclin-dependent kinase inhibitor 1A (CDKN1A)の発現の低下がSTAT5aKOで認めた。以上より、STAT5aの発現低下によりCDKN1Aの低下を介して細胞増殖亢進に働くことが示唆された。STAT5a遺伝子のexon3付近にCpG islandが存在するため、メチル化による調節の可能性を考え、脱メチル化剤投与後、2種類のprimerを用いたmethylation-specific PCRにて検討を行った。肝癌細胞株であるHepG2、PLC/PRF/5共にメチル化された部位が脱メチル化され、STAT5aの発現上昇更にはCDKN1Aの発現上昇を認め、細胞増殖は抑制された。【結論】DNAメチル化よるSTAT5aの発現低下が肝癌発生に関与している可能性が示唆された。特定の分子のメチル化抑制を利用した予防法及び治療法が今後期待される。
索引用語 STAT5a, CDKN1A