セッション情報 ワークショップ14(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

エピジェネティクスと消化器癌

タイトル 外W14-11:

消化器癌における癌幹細胞マーカー発現の意義とエピジェネティック修飾による制御の可能性

演者 山田 眞一郎(徳島大・消化器・移植外科)
共同演者 島田 光生(徳島大・消化器・移植外科), 宇都宮 徹(徳島大・消化器・移植外科)
抄録 【目的】近年、癌幹細胞の概念が提唱され、エピジェネティック修飾や低酸素応答因子(HIF-1)との関連についても知見が蓄積されつつある。そこで、消化器癌におけるヒストン脱アセチル化およびHIF-1発現を介した癌幹細胞制御の可能性について検討した。【方法】検討1 ヒストンアセチル化修飾と癌幹細胞:肝内胆管癌切除例35例を対象。HDAC(histone deacetylase)・HIF-1・CD133発現と臨床病理学的因子との関連を解析。蛍光二重免疫染色にてそれぞれの発現の局在を細胞レベルで検討。検討2 HDAC阻害による薬剤耐性解除:胆管癌細胞(HuCCT1)の5-FU・VPA(valproic acid)、大腸癌細胞(HCT-116)の5-FU・VPAの併用効果を解析(MTT法)。FACSによりCD133・CD44共陽性細胞割合を解析、sphereの形成能およびstemness gene(Oct4, Nanog, Bmi-1)発現へのVPA投与効果を検討。【結果】 検討1:CD133陽性例の5生率(9%)は陰性例(62%)と比較し有意に不良。HDACとHIF-1発現はCD133発現と相関し、共に独立予後不良因子であった。肝内胆管癌の蛍光二重免疫染色にてHDACとHIF-1、HIF-1とCD133が細胞レベルでも共発現することを確認した。検討2:HuCCT1に単剤では5-FU 1mM, VPA 0.5mMともに増殖抑制効果は認めないが、5-FU 1mM +VPA 0.5mM併用で30%の増殖抑制を認めた。HCT-116も5-FU単剤では39%だが、VPA併用で68%と抑制効果が増強した。またHCT-116においてCD133・CD44共陽性細胞割合は5-FU単独で3%から5.5%に増加したがVPA併用により1.3%へ減少しており、癌幹細胞の分化誘導が考えられ、sphere形成能の減弱やstemness gene発現の有意な低下も認めた。【結語】 消化器癌幹細胞はヒストン脱アセチル化、HIF-1発現を介したシグナルにより制御されており、癌幹細胞の治療抵抗性をエピジェネティック修飾により解除できる可能性がある。
索引用語 ヒストンアセチル化修飾, HDAC inhibitor