セッション情報 ワークショップ15(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝細胞癌に対する治療の標準化-内科の立場・外科の立場-

タイトル 消W15-1:

腫瘍条件、宿主条件に応じた肝細胞癌切除後再発予防策の提案

演者 井上 陽介(東京大・肝胆膵外科)
共同演者 長谷川 潔(東京大・肝胆膵外科), 國土 典宏(東京大・肝胆膵外科)
抄録 【背景・目的】肝細胞癌(HCC)は手術、画像診断、再発治療の進歩により、比較的良好な長期生存を得られるが、切除後再発率は依然高率である。今後の課題は、再発そのものの予防である。当科での初発肝切除症例につき検討し、再発予防に関する最近の当科での試みに関して報告する。【対象・方法】1994-2008年、当科で切除された779例の初発HCCにつき、病因別(HCV、HBV関連)および、宿主条件(Child-Pugh A vs B) 、腫瘍条件(5cm以内/3個以下/肉眼的脈管侵襲(TT)なし、を満たすvs満たさない)につき、その長期成績を検討する。当科では、5cm以内/3個以下/脈管侵襲なしのHCV-HCCの切除後に、インターフェロンαを用いた補助療法の多施設共同無作為比較試験を展開中である。同様に、HBV-HCCの切除後に核酸アナログ(エンテカビル)を用いた補助療法に関する前向き試験を開始した。また、TTを有する高度進行HCCに対しては、切除後に補助療法(非治癒切除例は維持療法)にソラフェニブを用いる前向き試験を開始する。【結果】779例のうち、HBV-HCC151例の1、3、5年無再発生存率は60、40、29(%)、HCV-HCC446例では69、34、21(%)であり、HCV-HCCでより長期的に再発が発生する傾向がみられた。同様にChild A 652例では68、39、28(%)に対し、Child B 125例では、62、25、11(%)と有意に低率であった(P=.0002)。5cm以内/3個以下/TTなしを満たす462例の1、3、5年無再発生存率は78、43、29(%)、満たさない317例では51、28、19(%)であり(P<.0001)、TTを有する症例77例に限定すると38、28、19(%)であった。【結論】TTを有するHCCでは即効性のある再発予防が求められ、腫瘍条件が良好なHCCでは中長期的な再発の抑制がより肝要である。また腫瘍条件、宿主条件ともに不良な症例の再発予防は今後の検討課題といえる。HCCはその病因、腫瘍条件により再発の形式や頻度が異なり、当然再発予防策も単一ではありえない。各々の病態にマッチした切除後再発予防策を提案、確立していくことが昨今の肝臓外科に課せられた使命である。
索引用語 肝細胞癌, 切除後再発