セッション情報 |
ワークショップ15(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)
肝細胞癌に対する治療の標準化-内科の立場・外科の立場-
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タイトル |
肝W15-2:肝切除を基本とした肝細胞癌の治療戦略
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演者 |
多田 俊史(大垣市民病院・消化器内科) |
共同演者 |
熊田 卓(大垣市民病院・消化器内科), 豊田 秀徳(大垣市民病院・消化器内科) |
抄録 |
【目的】当院での20年間のデータをもとに肝細胞癌(HCC)の治療戦略について検討を行った.【方法】対象は1990年1月から2009年12月までに当院で診断されたHCC1668例である.これらのうちHBs抗原陽性HCC260例とHCV抗体陽性HCC1175例を前半10年のA期と,後半10年のB期に分け検討を行った.さらに3cm,3個以下で初回治療が肝切除249例,ラジオ波焼灼療法(RFA)158例の検討も行った.【成績】1) HBs抗原陽性HCCはA期124例,B期136例である.背景因子として年齢,性別,核酸アナログ治療,Child-Pugh(C-P)分類,StageでAB期の検討をしたところ,核酸アナログ治療の有無で有意差が認められた.A期B期で初回治療法(肝切除/RFA/TACE/PEIT/その他/なし):22.6%/0.8%/35.5%/12.9%/13.7%/14.5%と43.4%/11.8%/16.9%/0.7%/9.6%/17.7%で、さらに累積生存率(5年/10年):22.8%/13.3%と76.9%/70.8%でそれぞれ有意差が認められた.2)HCV抗体陽性HCCはA期575例,B期600例である.同様に背景因子では,年齢,IFN治療の有無,C-P分類,Stageで有意差が認められた.またA期B期で初回治療法(同上):15.5%/2.4%/32.7%/27.1%/5.4%/16. 9%と33.9%/28.4%/18.4%/1.5%/3.8%/14.0%で,さらに累積生存率(5年/10年):28.5%/11. 0%と51.5%/16.9%でそれぞれ有意差が認められた.3cm,3個以下のHCCの累積生存率(5年/10年)は肝切除とRFAの順に76.8%/40.9%と59.7%/25.0%で有意差が認められた.さらにC-P分類Aかつ2cm以下の症例においても累積生存率で有意差が認められた.続いて同症例の背景因子をPropensity scoreで補正を行ったところ,累積生存率に有意差が認められなかったが,再発率(5年)に関しては61.5%と90.9%であり有意差が認められた.【結論】21世紀になりHCCの予後は向上がみられた.理由として慢性肝炎の治療が進歩し,根治的な癌の治療がより多く行われていることが考えられた.再発率や肝機能,QOLなども考慮しつつ,可能であれば積極的に肝切除をすすめることが重要であると考えられた. |
索引用語 |
肝細胞癌, 治療戦略 |