抄録 |
【目的】肝癌診療ガイドラインでは3cm以下・3個以下の小肝細胞癌(SHCC)は肝切除術(HR)またはLATの適応としている。当科では患者因子から治療方針を決定し、HR、LAT双方の治療を行っている。当科の治療方針を示し、その妥当性を検証する。【対象】1999年から2010年までのSHCC 568例(HR169例、LAT 399例)を対象とした。肝障害度A/Bを対象とし、明らかな腫瘍栓、遠隔転移を伴う症例は除外した。年齢・性別、ウィルスマーカー、サイズ、個数、肝機能、腫瘍マーカー、HCC治療歴、治療法を変数として多変量解析を行い、全生存(OS)、無再発生存(DFS)における予後因子の抽出を試みた。【治療方針】1998年までの当科の治療成績から、LATをSHCC治療の第一選択とした。しかし、非ウィルス性肝炎、非肝硬変症例と非単純結節型、脈管侵襲陽性例、肝内転移陽性例、グリソン鞘近接例などLATのリスクが高いと考えられる症例には積極的にHRを選択した。【結果】HRの術式の内訳は部分切除55%、区域切除以下41%、葉切除4%であった。LATのアプローチは経皮44%、鏡視下50%、開腹開胸6%であった。5年、10年生存率はHRで93%, 45%で、LATで51%, 23%、5年無再発生存率はHRで45%, LATで8%とOS, DFSいずれにおいてもHR群が良好な成績を示した。多変量解析ではOSで65歳以上(ハザード比 3.01, P値 0.02)、肝切除の選択(ハザード比 0.34, P値 0.02)が、DFSでは65歳以上(ハザード比 2.19, P値 0.008)、非初回治療(ハザード比 1.79, P値 0.03)、肝切除の選択(ハザード比 0.53, P値 0.02)が独立した予後規定因子として抽出された。また、LATでは初回治療に比べ、非初回治療で有意に成績が劣った。【結語】当科での10年間の治療成績から、3cm以下、3個以下の肝細胞癌は、切除可能であれば肝切除を行うことで成績の向上が期待できる。。 |