セッション情報 ワークショップ15(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝細胞癌に対する治療の標準化-内科の立場・外科の立場-

タイトル 肝W15-5追1:

Gd-EOB-DTPA造影MRIによる乏血性肝癌の診断とRFAを中心とした治療

演者 小林 正宏(虎の門病院・肝臓センター)
共同演者 保坂 哲也(虎の門病院・肝臓センター), 熊田 博光(虎の門病院・肝臓センター)
抄録 【目的】我々は小型肝癌の治療における悪性度評価の重要性に注目し、悪性度の増した肝癌においては肝切除がより推奨されることを報告してきた。今回は低悪性度と考えられる乏血性の肝癌を積極的に診断し、RFAにて治療を行う戦略につき検討した。【対象】1. 乏血性肝癌の検出: 2008年1月より2010年12月まで当院でGd-EOB-DTPA造影MRIを実施した乏血性の結節性病変のうち組織学的検討が可能であった40症例46結節を対象とした。病理組織は切除検体が6結節、細径針による生検が40結節であった。2. 乏血性肝癌の予後を検討するため1999年から2010年までに診断治療された乏血性肝癌153例の治療成績を検討した。USで描出困難な結節に対してもMRIのDICOMデータを用いたnavigationを併用し積極的に生検・治療をおこなった。【成績】1. 組織学的診断はHCC34結節、dysplastic nodule(DN)10結節、再生結節(RN)2結節であり、腫瘍径はHCCが7-27(中央値16)mm、非HCCが10-20(13)mmであった。EOB-MRIの肝細胞相で低信号を呈した結節は41結節で、組織はHCC36結節、DN4結節、RN1結節であった。一方肝細胞相で等信号であった5結節はいずれもDNであった。EOB造影MRIで低信号を呈した41結節のうちHCCの34結節はdynamic MRIの中間相(造影剤静注120~180秒後)で低信号を呈するか、拡散強調画像で高信号を呈したのに対し、非HCCの3結節ではこのようなパターンを呈さなかった。2. 乏血性肝癌に対する治療は肝切除12例、局所治療141例(RFA107例、その他34例)であった。肝切除症例とRFA症例の治療成績を比較すると、3/5/10年の全生存率はそれぞれ、92/80/64% vs. 97/84/45%であり、また1/3/5年の無再発生存は92/56/56 vs. 93/58/35%といずれも差を認めなかった。【まとめ】EOB-MRIにより乏血性肝癌を高感度に検出することが可能であった。また乏血性肝癌に対するRFAは肝切除と同等の生存率・無再発生存率であった。以上のことからEOB-MRIによる乏血性肝癌の検出とRFAによる低侵襲治療は、有効な治療戦略になりうると考えられた。
索引用語 乏血性肝癌, EOB