セッション情報 ワークショップ15(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝細胞癌に対する治療の標準化-内科の立場・外科の立場-

タイトル 肝W15-7:

肝癌Stage3の集学的治療戦略

演者 鈴木 雄一朗(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 土谷 薫(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】肝癌治療の最終目標は長期生存であり、初回局所根治・再発抑制・再発の早期発見・再発治療・肝予備能温存の全てが重要である。今回我々は5年生存率41.9%(第17回全国原発性肝癌追跡調査報告)とされるStage3症例を検討し、腫瘍因子別に長期生存を獲得し得る集学的治療戦略を考察した。【方法】1998年1月から2010年12月に当院で初発肝癌と診断し治療を行ったStage3205例を腫瘍の特徴から第1群:31mm以上3個まで、第2群:30mm以下3個まで、第3群:4個以上に群分けし、それぞれの初回治療法による累積生存率をKaplan-Meier法を用いて解析した。【成績】男性131例・女性74例、平均年齢68歳、HCV151例・HBV25例・NBNC29例、平均腫瘍径34mm、平均腫瘍個数3.2個、ChildA162例・ChildB43例であった。Stage3全症例の累積生存率は3年69%・5年43%であった。初回治療法はOpe22例・RFA99例・TACE84例であり累積生存率はOpe:3年83%・5年39%、RFA:3年76%・5年52%、TACE:3年56%・3年31%でありRFAとTACEの間に有意差を認めた(p=0.001)。門脈塞栓を有する22症例に限っては累積生存率Ope:3年75%、RFA57%、TACE32%と優位差を認めないもののOpeが有効と考えられた。第1群ではOpe16例・RFA23例・TACE16例で累積生存率にそれぞれ有意差は認めなかった。第2群ではOpe6例・RFA65例・TACE12例、累積生存率Ope:3年100%・5年50%、RFA:3年85%・5年60%、TACE:3年67%・5年34%でRFAとTACEの間に有意差を認めた(p=0.017)。第3群ではRFA11例・TACE56例で累積生存率に有意差は認めなかった。HBV陽性肝癌の核酸アナログ内服群は有意に累積生存率が向上していた。ChildBでBCAA長期投与例(2年以上)の累積生存率は非投与例に比し向上していた。205例中8例にSorafenibが用いられ2例が生存中で他6例は導入後中央値173日の生存を認めた。【結論】Stage3ではVp症例で手術が第一選択と考えられ、30mm以下3個以内の症例でTACEよりRFAが有効と考えられた。腫瘍因子に応じた適切な治療、肝予備能温存がStage3症例の長期生存に寄与すると考える。
索引用語 肝癌Stage3, 集学的治療