セッション情報 ワークショップ15(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝細胞癌に対する治療の標準化-内科の立場・外科の立場-

タイトル 肝W15-10:

進行肝細胞癌の集学的治療における肝切除の意義

演者 下瀬 茂男(久留米大医療センター・消化器内科)
共同演者 田中 正俊(久留米大医療センター・消化器内科), 佐田 通夫(久留米大・消化器内科)
抄録 【目的】当医療センターでは動注ポートを用いた肝動注化学療法をHCCのダウンステージングを目的とした導入化学療法と位置づけて、積極的に進行HCCの集学治療を試みてきた。その治療成績から、集学治療における肝切除の標準化を検討したので報告する。【対象】2001年から2009年に治療を開始した初発HCC440例中、主腫瘍径5cm超、あるいは血管、胆管侵襲を合併する進行HCCで、積極的治療の対象になるChild-Pughスコア7点以下の81例について検討した。治療法は、肝切除(11例)、導入化学療法後の肝切除(DS-Hx:8例)、IVR治療(36例)、高齢や合併症による無治療観察(19例)に分類した。また全身化学療法4例とソラフェニブ治療3例は、少数例であったので生存解析からは除外した。【結果】対象例の平均年令71才、男性58例、女性23例。背景肝はHCV41例、HBV13例、非B非C17例、Child-Pugh A66例、B15例。平均腫瘍径8.5 cm(中央値8cm)、腫瘍病期2、3、4a、4bはそれぞれ14、28、34、5例であった。治療後の生存率解析では、それぞれの治療法における3年、5年生存率(MST月)は以下のごとくであった。肝切除64%、48%(MST:38M)、DS-Hx 86%、29%(MST:29M)、IVR治療 28%、14%(MST:16M)、無治療観察 5%、0%(MST:7M)であった。また肝切除を組み込んだ集学的治療症例(肝切除とDS-Hx例)19例(治療例全体の31%)の予後は73%、42%(MST:37M)と良好だった。さらに多変量解析の結果でも肝切除を組み込んだ集学的治療が有意の予後因子であることが明らかになった。【結論】進行HCC治療において、単に切除可能症例のみを肝切除するだけでなく、導入化学療法により腫瘍ステージが変化したことを確認、あるいは予測できた場合、次の腫瘍ステージに最も適した治療にConversion(肝切除)することで長期予後を確保する外科切除の標準化の導入は難治性進行肝細胞癌の予後改善に重要な戦略となろう。
索引用語 肝切除, リザーバー