抄録 |
F-18標識フルオロデオキシグルコース(FDG)を用いたポジトロン断層法(PET) は2002年より膵臓癌などで、2010年より基本的にすべての悪性腫瘍に保険適応となった。この間にPETの標準機種はPET/CTとなり、その感度も飛躍的に向上して、多くの癌でその術前診断としての使用が必須となるなど、ますますFDG-PET、FDG-PET/CTの臨床的意義は重要となりつつある。肝細胞癌(HCC)切除例70例の術前PETの検討では低分化型HCCのFDG集積(SUVmax, 腫瘍正常肝臓比TNR)は、中分化、高分化型に比べて有意に高値であり、高SUV群、高TNR群の無再発生存および累積生存率は低SUV群、低TNR群に比べて不良であった。多変量解析ではAFP値とTNRが無再発および累積生存の独立した予後因子で、また抗癌剤耐性に関与するP-glycoprotein(Pgp)の発現はSUVやTNRと逆相関を示した。FDG-PETは術前診断、予後予測、化学療法効果予測、治療後判定などで有用であった。腫瘤形成型肝内胆管癌では、FDG集積は明瞭で、リンパ節診断や遠隔転移の診断能はCT/MRIに比べて同等以上で、治療方針の決定に有用であった。SUVおよびTNRとPgpの発現は負の相関を示し、化学療法の効果予測にも有用であった。SUVはまた術後再発の予測にも有用であった。肝外胆管癌では原発巣のSUVやリンパ節転移への集積の有無が予後予測の指標となった。膵癌ではすでに多くの報告がなされ、FDG-PET診断には一定の評価はあるが、周囲の正常組織(心臓、肝臓、胃)の高集積にマスクされ、比較的集積の淡い膵癌では診断がやや困難で、結果的に予後の改善には必ずしも結びついていないという限界も示されている。FDG-PET/CT導入により、PET/CTの高分解能をいかした小膵癌の診断能などに大いに期待が寄せられているが、その臨床的意義はまだまだ報告が少なく、さらなる検討が必要である。 |