セッション情報 ワークショップ17(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

小腸疾患の診断と治療

タイトル 内W17-2:

スパイラル内視鏡検査の安全性及び有用性に関する多施設共同試験

演者 山田 篤生(東京大・消化器内科)
共同演者 岡 志郎(広島大・内視鏡診療科), 小池 和彦(東京大・消化器内科)
抄録 【背景】バルーン内視鏡の登場により従来観察困難であった小腸を観察することが可能となったが、実際には全小腸を観察する場合には相応の検査時間を要し、また困難例にも遭遇する。スパイラル内視鏡(以下SE)は、細径スコープと内視鏡に装着するオーバーチューブによって構成され、先端に螺旋状の突起が設けられたオーバーチューブを回転させることで小腸が短縮され深部挿入を可能にしている。我々は本邦におけるスパイラル内視鏡検査の安全性及び有用性に関する多施設共同試験を行っており、その中間報告を行う。【方法】対象は小腸疾患確診あるいは疑い例で小腸内視鏡検査を予定している者、もしくはERCPを予定しているが術後再建腸管のため通常の内視鏡ではERCP施行困難が予想される者である。重大な全身性合併症を有する者及び消化管穿孔時に手術療法を受けることが不可能な者は除外した。文書同意を得た後にSEを施行した。内視鏡先端には透明フードを装着し、送気はCO2を用いた。評価項目は病変発見率及び内視鏡治療成功率および偶発症の有無である。【結果】2011年3月までにスパイラル小腸内視鏡検査を16例(平均年齢60歳、男性8名)に施行した。検査理由はOGIB精査7例、腫瘍精査6例、その他3例であった。最深部までの到達時間26分[15-53]、全検査時間41分[30-67]、透視時間2分[1-16]であった。ジアゼパム15mg[10-30]またはミダゾラム10mg[7.5-15]を用いた。10例に小腸に有意所見を認め、内訳はびらん3例、悪性リンパ腫3例、ポリープ1例、リンパ管腫1例、血管異形成1例、小腸癌1例であった。内視鏡治療は止血術1例、ポリペクトミー1例を行った。全例偶発症なく安全に検査を施行できた。術後再建腸管例に対するSE-ERCPを2例に施行し、1例において消化管穿孔を来たし緊急手術を要した。【結論】スパイラル内視鏡検査は、少なくとも小腸検査目的に使用する場合には安全に導入可能であるが、ERCPは更なる安全対策が必要である。SEの有用性については、更に症例を重ね検討する必要がある。
索引用語 スパイラル内視鏡, 小腸内視鏡