セッション情報 ワークショップ17(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

小腸疾患の診断と治療

タイトル 内W17-3:

原因不明消化管出血の診断と治療

演者 迎 美幸(北里大東病院・消化器内科)
共同演者 小林 清典(北里大東病院・消化器内科), 小泉 和三郎(北里大東病院・消化器内科)
抄録 【目的】原因不明の消化管出血(OGIB)の診断・治療成績と、内視鏡的検査法の意義を明らかにする。【方法】当院でOGIBの精査を目的としてシングルバルーン小腸内視鏡(SBE)やカプセル内視鏡(CE)を行った63例を対象とした。OGIB症例を、顕性出血が持続しているovert ongoing bleeding (A群)15例、顕性出血の既往があるprevious overt bleeding (B群)34例および不顕性出血で貧血や便潜血が持続するoccult bleeding(C群)14例の3群に分類した。各群で、背景因子や出血源検索のための検査法、診断および治療成績、治療後の予後などについて検討した。【結果】1)各群で年齢や性別に差はなかった。初診時の平均Hb値は、A群7.1±1.9g/dl、B群8.6±2.2g/dl、C群9.8±3.2g/dlでA群が有意に低値であった。全身疾患の合併率や抗凝固薬服用例の頻度は3群で差はなかった。2)初回検査法は、SBEはA群27%,B群18%,C群7%、小腸造影は各々47%,47%,64%、CEは認めなかった。最終的なSBE施行率は、A群100%、B群47%、C群29%であった。SBEを未施行のB群18例とC群10例では小腸造影とCEが全例に行われていた。3)出血源と考えられる異常所見を認めたのは26例(41%)で、検査法別の有所見率はSBE 60%,CE 32%であった。出血性状の違いによる有所見率はA群60%,B群38%,C群29%で、A群は他群より高率であった。異常所見を粘膜病変(血管拡張や潰瘍・びらんなど)と腫瘍性病変に分類すると、A群は粘膜病変7例と腫瘍性病変2例、B群は8例と5例、C群は各2例で、とくにA群で粘膜病変が多かった。4)SBEで内視鏡的止血処置を行ったのは、A群5例,B群1例,C群1例ですべて粘膜病変であった。活動性出血は3例に認め、全て内視鏡的に止血可能であった。治療後の平均観察期間は2.9±1.5年で再出血を2例に認めたが、ともに内視鏡的に止血可能であった。【結論】OGIBに対する検査法のなかで、顕性出血が持続する症例では粘膜病変を主とした異常所見を認める頻度が高く、内視鏡検査法ではSBEの診断および治療成績が良好であった。
索引用語 OGIB, 小腸内視鏡検査