抄録 |
【目的】早期胃癌に対するESDは手技的にはほぼ確立し、標準治療の一つとして広く普及している。その有効性や問題点を明らかにするために長期予後を検討する。【方法】当科にて2001年6月~2007年2月の期間にESDを施行した早期胃癌314症例368病変を対象とした。最終病理診断は絶対適応(A)病変:186(50.5%)、適応拡大(B)病変:133(36.1%)、適応外(C)病変:49(13.3%)であり、各群の追跡率/平均観察期間はA例:98.6%/75.1M(7~130)、B例:97.5%/77.8M(7~129)、C例:100%/75.2M(13~129)であり、その治療成績などを検討した。【成績】一括完全切除率、A病変:95.7%(178/186)、B病変:96.2%(128/133)、C病変:89.8%(44/49)。局所遺残再発、A病変:0.5%(1)、B病変:0、C病変:2.0%(1)。絶対適応1病変はHM1であったが基礎疾患のために経過観察し、5ヶ月後に遺残再発したが追加ESDにて根治が得られた。適応外1病変はcSM癌に対する姑息的局所治療目的でのESDにてVM1となり、4年後に局所再発を来した。リンパ節転移:なし。遠隔再発、A病変:0、B病変:0、C病変:2.0%(1)。適応外の 1例はpSM2,tub1~por2,ly(+)v(+)にて追加外科手術を行ったが、術後1年で肝、肺転移を来した。異時性多発癌、A例:9.0%(13/145)、B例:8.3%(10/121)、C例:6.3%(3/48)。異時性他臓器癌、A例:15.2%(22)、B例:10.7%(13)、C例:10.4%(5)であり、計40例中では肝細胞癌(12),食道癌(9)が多かった。生存率、胃癌死は適応外2例であり、他病死をA例:16.1%(23/143)、B例:16.9%(20/118)、C例:14.6%(7/48)に認めた。全5年生存率は86.4%であり、適応外例を追加外科手術の有無で分けると、各5年生存率はA例:85.3%、B例:88.1%、手術施行C例:87.1%、手術未施行C例:82.4%であり、有意差はなかった。【結論】早期胃癌に対するESDの治療成績,予後は良好であるが、異時性多発癌や異時性他臓器癌がしばしば認められ、特に予後には異時性他臓器癌が関与しており、胃はもとより他臓器の厳重な経過観察が必要である。 |