セッション情報 ワークショップ17(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

小腸疾患の診断と治療

タイトル 外W17-8:

小腸癌の診断と治療およびその問題点 -第72回大腸癌研究会:小腸癌アンケート調査の解析結果より-

演者 衣笠 哲史(久留米大・外科)
共同演者 緒方 裕(久留米大医療センター・外科), 白水 和雄(久留米大・外科)
抄録 (背景)小腸癌(空・回腸癌)は稀な疾患であるためその臨床像は不明な点が多い。最近では小腸疾患の診断にPETやダブルバルーン内視鏡・カプセル内視鏡などが導入され小腸癌の早期診断や質的診断が可能となってきた。しかし、治療に関しては未だ有効な治療方法は確立されていない。第72回大腸癌研究会の際に実施された小腸癌アンケート調査の解析結果をもとに問題点を検討した。(対象と方法)1995年から2004年までに原発性空腸・回腸癌280例を対象とした。(結果)症例の平均年齢は60.9歳、男女比は1.3:1、空腸癌169例、回腸癌100例、不明11例であった。診断方法(重複あり)はCT検査が200例で一番多く、次いで小腸造影125例、小腸内視鏡53例であった。腫瘍径は平均48mmで、組織型は高分化型腺癌と中分化型腺癌で71.8 %を占めた。深達度はT3以深の症例が81.8 %、リンパ節転移陽性症例が54 %、遠隔転移症例は34.6 %に認め腹膜播種症例が18.9 %と高率であった。切除率は88.6%で、治癒切除率は57.5 %であり5年生存率は47.9 %であった。術後補助化学療法は経口フッ化ピリミジンを中心に治癒切除症例の44.7 %に施行されていたが、5年生存率は67.3 %と手術単独群の71.9 %と比べ差を認めなかった。切除不能症例77例に化学療法が施行されたが生存期間中央値は17ヶ月とBSC群の8ヶ月に比べ良好であったが有意差は認めなかった。(結語)現在までの小腸癌治療成績は良好とはいえなかった。診断能力の向上に伴いより早期の治療が可能になれば治療成績の改善が期待できると考える。しかし、高度進行再発小腸癌に対する治療方法のさらなる絞り込みが必要と考えた。小腸癌治療指針を確立するまでのデータは乏しいため、今後症例を集積し解析していく必要があると思われた。現在は大腸癌治療に準じているのが現状であるが、小腸に特化した適切な治療法を確立できれば予後の改善が期待できると思われた。
索引用語 小腸癌, 診断・治療