セッション情報 ワークショップ17(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

小腸疾患の診断と治療

タイトル 内W17-10:

消化管濾胞性リンパ腫における小腸内視鏡所見および臨床病理学的特徴

演者 梁井 俊一(九州大・病態機能内科)
共同演者 中村 昌太郎(九州大・病態機能内科), 松本 主之(九州大・病態機能内科)
抄録 【目的】消化管濾胞性リンパ腫における小腸病変の内視鏡所見と病理学的特徴を検討する.【方法】当科および関連施設で診断された消化管濾胞性リンパ腫のうち,バルーン内視鏡(ダブルバルーンあるいはシングルバルーン内視鏡)またはカプセル内視鏡を施行した33例(男性17例,女性16例;平均年齢61歳)を対象とし,臨床病理学的特徴、t(14;18)/IgH-BCL2転座の有無、および内視鏡所見を遡及的に検討した.【結果】小腸内視鏡検査としてバルーン内視鏡のみを21例に,カプセル内視鏡のみを3例に,両検査を9例に施行した.29例(88%)で空腸または回腸(空腸のみ8例,回腸のみ3例,両部位18例)にリンパ腫が認められた(JI群).他の4例(非JI群)では,空・回腸病変陰性であり、消化管の単一領域(十二指腸3例,大腸1例)のみにリンパ腫が限局していた.JI群と非JI群の間で年齢,性,臨床病期、組織学的悪性度に差はなかった.JI群における空・回腸病変の内視鏡所見はmultiple lymphomatous polyposis(MLP)型24例,隆起型2例,混合型3例に大別された.混合型3例ではいずれもMLP型病変がみられ、潰瘍(1例)または腫瘤(2例)を伴っていた.すなわち、JI型29例中27例(93%)にMLP型病変が認められ、消化管の複数領域にリンパ腫が浸潤していた.一方、t(14;18)/IgH-BCL2転座は,JI群28例(97%)で検出されたのに対し,非JI群では2例(50%)のみであり、その陽性率に有意差がみられた(p<0.05).初回治療として,外科的切除を3例に,リツキシマブ併用CHOP療法を11例に,リツキシマブ単剤療法を11例に,抗菌薬治療を4例に施行し、他の4例は経過観察(watch and wait )した. 以上の治療により25例(76%)で完全寛解が得られた.JI群(76%)と非JI群(75%)の間で寛解率に差はなかった.【結論】消化管濾胞性リンパ腫ではMLP型小腸病変が高率に認められる.小腸病変の有無で生物学的特徴が異なる可能性がある.
索引用語 消化管濾胞性リンパ腫, 小腸内視鏡