セッション情報 ワークショップ18(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患におけるprobioticsと機能性食品の有用性

タイトル 消W18-5:

低用量アスピリン関連小腸粘膜傷害に対するLactobacillus caseiの有用性:カプセル内視鏡を用いた前向きランダム化比較試験

演者 遠藤 宏樹(横浜市立大附属病院・内視鏡センター)
共同演者 日暮 琢磨(横浜市立大附属病院・内視鏡センター), 中島 淳(横浜市立大附属病院・内視鏡センター)
抄録 【目的】腸内細菌がNSAIDや低用量アスピリン(LDA)による小腸傷害の発生や増悪に関与することが知られており、プロバイオティクスを用いた細菌叢修飾による治療・予防が注目されている。今回、LDA関連小腸傷害に対するプロバイオティクスの効果をカプセル内視鏡(CE)で評価した。【方法】原因不明貧血精査目的でCEを施行したLDA常用(≧3ヵ月)者のうちPPI併用の35例を対象とし、小腸血管拡張症の所見を認めた4例とCEが盲腸まで到達しなかった2例を除外した29例を無作為に2群に割当てた。介入として対照群には無投薬、プロバイオティクス群(Pb群)にはLactobacillus caseiを3ヵ月間投与しCE再検にて粘膜変化を評価した。粘膜所見を調べ、さらにCE スコアを解析した。CEスコアは小腸粘膜炎症変化を絨毛所見、潰瘍と狭窄を基にスコア化したもので、最終スコアで正常(<135点)、軽症(135~790点)、中等症/重症(≧790点)に分類される。Hb値も比較した。【成績】ランダム化後LDA中止などで除外となった4例を除く対照群12例、Pb群13例で比較検討した。投薬による有害事象発生はなかった。介入前後のびらん・潰瘍数は対照群(前:中央値3、後:中央値3;P=0.859)では差がなかったのに対し、Pb群では有意な差を認めた(前:中央値3、後:中央値1;P=0.008)。また介入前から後へのびらん・潰瘍数の変化は対照群(中央値:0.5)と比べPb群(中央値:-2)で有意に大きかった(P=0.039)。介入前後のCEスコアは対照群で差を認めなかった(前:中央値348、後:中央値340;P=0.875)のに対し、Pb群では有意な差を認めた(前:340、後:143;P=0.004)。Pb群で中等症/重症だった2例は両者軽症へ、軽症10例のうち5例が正常へ改善した。Hb値はPb群においてのみ有意な上昇を認めた(P=0.002)。【結論】本研究はLDA常用者の小腸傷害治療に関する初めての前向きランダム化比較試験である。プロバイオティック療法はLDA関連小腸傷害に有用かつ安全な治療である可能性が示唆された。
索引用語 小腸, プロバイオティクス