セッション情報 ワークショップ18(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患におけるprobioticsと機能性食品の有用性

タイトル 消W18-7:

Lactobacillus casei Shirota (LcS)を用いた大腸炎関連大腸癌予防の可能性

演者 光山 慶一(久留米大・消化器内科)
共同演者 佐田 通夫(久留米大・消化器内科), 松本 敏((株)ヤクルト本社・ヤクルト中央研究所)
抄録 【目的】潰瘍性大腸炎(UC)では大腸癌を高率に合併するため、発癌予防効果を有する治療法の開発が望まれている。われわれは、マウスの大腸炎および大腸炎関連大腸癌(CAC)モデルにおいてIL-6/STAT3シグナルの活性化が病態に関与していることを報告した (J Immunol 2010)。本研究の目的は、CACに対するプロバイティクスLcSの予防効果を明らかにすることである。【方法】(1) LPS刺激RAW264.7細胞株からのIL-6産生に対するLcS添加の影響を検討した。LcSをprotoplast分画、intact cell wall分画とその主要な可溶性成分polysaccharide-peptidoglycan complex (PSPG)に分けてIL-6産生抑制作用を比較した。PSPGをPSPG-IとPSPG-IIに分けて同様の検討を行った。(2) 炎症部マクロファージからのsIL-6Rの産生におよぼす腸内細菌の関与を検討した。(4) 活動期UC患者を対象として、LcSの投与効果をオープン試験で検討した。患者10例にLcS (4.0×1010/80 ml)を1日2回 8週間投与し、臨床スコアの推移を対照群9例と比較した。【結果】(1) LPS刺激RAW264.7にLcSを添加すると、IL-6産生は濃度依存性に抑制された。LcSによるIL-6産生抑制は生菌体と死菌体とで差を認めず、LcSの成分のうちPSPG-Iがその作用に関与していた。(2) CACモデルの炎症部マクロファージでは、細胞表面のIL-6RおよびTNF-α coverting enzyme (TACE)が高発現していた。SPFマウスの腸内常在菌死菌体でマクロファージを刺激するとsIL-6R産生が著明に誘導され、その産生はTACE阻害剤TAPIの添加により抑制された。(3) CACモデルにLcSを投与すると、IL-6/STAT3シグナルおよび発癌の抑制がみられたが、LcSΔPSPG-I (PSPG-I構造が欠損したLcS変異株)の投与では抑制されなかった。(4) LcS投与UC患者では、治療前および対照群に比べて臨床スコアの軽減がみられた。【結論】CACの発生には腸内細菌により誘導されるIL-6・sIL-6が関与し、LcSはPSPG-IによるIL-6産生抑制を介してCACを予防することが証明された。
索引用語 大腸炎関連大腸癌, IL-6