セッション情報 ワークショップ18(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患におけるprobioticsと機能性食品の有用性

タイトル 消W18-8:

Probioticsによる大腸癌発症予防の有用性

演者 大原 正志(東京医大茨城医療センター・消化器内科)
共同演者 鈴木 正徳(菅間記念病院・外科), 松﨑 靖司(東京医大茨城医療センター・消化器内科)
抄録 演者らは機能性乳酸菌食品の摂取で腸内環境が改善され、酪酸やイソ酪酸などの短鎖脂肪酸(SCFA)が増加することや腸管蠕動能、宿主細胞性免疫能が増強することを報告してきた。今回、大腸癌患者と健常人の腸内フローラの解析とprobiotics(Pb)投与後の変化や大腸癌培養細胞での検討を行い、Pbの大腸癌発症予防の有用性の検討と臨床応用への問題点と課題についての考察を行った。対象と方法:大腸癌患者10例(平均年齢:61.3歳), 健常人20例(平均年齢:59.5歳)に対し(A),(B)の検討、大腸癌細胞株を用いて(C)の検討を行った。(A)大腸癌患者、健常人(10例)の糞便、末梢血を採取して便性・便通、腸内フローラ・腸内環境の変化と血中NK細胞活性とIL1-βの産生を測定する。(B)健常人(10例)に対してPb(LG21)を1回/日12週間摂取させ、4週、8週、12週毎に検体を採取して上記と同様の検討を行う。(C)ヒト大腸癌細胞株(DLD-1 細胞, WiDr 細胞)とSCFA(酪酸, イソ酪酸、酢酸)をco-cultureして細胞増殖阻害活性(WST-8 assay)を検討する。結果:大腸癌患者では、健常人に比べて腸内環境の悪化が認められた。LG21の摂取でLactobacillus の検出率やイソ酪酸などのSCFA が増加して腸内環境及び便性・便通の改善と血中IL1-β産生亢進やNK細胞活性の増強が認められた。SCFAは大腸癌細胞株に対して細胞増殖阻害作用を認め、その作用力は酪酸、イソ酪酸、酢酸の順に強かった。結論:Pbの摂取で腸管蠕動亢進作用や抗腫瘍作用を持つSCFAの増加が示され、Pbの摂取による大腸癌発症予防の可能性が示唆された。しかし、問題点は、ヒト腸内フローラには個体差があり、Pb細菌のSCFA生成に及ぼす影響は個体により必ずしも一定でないことである。これは、腸内フローラより生成される乳酸をPb細菌と供に酢酸、プロピオン酸や酪酸などのSCFAに変換する腸内共生菌に個体差があるためである。今後、臨床応用への課題として、Pbを使った大規模疫学研究データの集積と腸内共生菌の解析、Pbの腸内フローラでの消長の解析が必要と考えられた。
索引用語 Probiotics, 大腸癌