セッション情報 ワークショップ18(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患におけるprobioticsと機能性食品の有用性

タイトル 消W18-9:

緑茶カテキンを用いた肥満関連大腸および肝発癌予防

演者 清水 雅仁(岐阜大大学院・消化器病態学)
共同演者 久保田 全哉(岐阜大大学院・消化器病態学), 森脇 久隆(岐阜大大学院・消化器病態学)
抄録 【目的】インスリン抵抗性の出現、IGF/IGF-1Rの過剰活性、アディポサイトカインの不均衡、慢性炎症状態の惹起等、肥満・内臓脂肪の増加に伴う様々な分子異常は大腸および肝発癌に深く関与している。今回我々は、緑茶カテキンEGCGが、これらの分子異常を標的とし改善することで、肥満に関連した大腸および肝発癌を抑制するか、肥満・糖尿病・高脂血症・脂肪肝を発症するC57BL/KsJ-db/dbdb/db)マウスを用いて検討した。【方法】db/dbマウスにAzoxymethane(AOM)またはDiethylnitrosamine(DEN)を投与し、大腸前癌病変および肝腫瘍を誘発した。AOMおよびDEN処置終了後よりEGCG(0.1%)を飲水投与し、大腸前癌病変の発生、肝腫瘍(肝細胞癌、肝腺腫)と肝前癌病変の発生、IGF/IGF-1Rシグナルの活性、インスリン抵抗性、血清脂質異常、肝脂肪化、アディポサイトカインの変化、炎症性サイトカインの発現に及ぼす影響について検討した。【結果】EGCGの投与によって大腸および肝前癌病変数と、肝腺腫の発生率およびmultiplicityは有意に抑制された。血清のインスリン、IGF-1/2、中性脂肪、総コレステロール、レプチン、およびTNF-α値はEGCGの投与によって低下した。またEGCG投与群において、大腸粘膜におけるIGF-1R、リン酸化型IGF-1R、リン酸化型GSK-3β、β-catenin、COX-2、cyclin D1蛋白の発現低下と、肝におけるIGF-1R、ERK、Akt、Stat3、JNK蛋白のリン酸化抑制が認められた。EGCGは、脂肪肝の組織像を改善し肝内中性脂肪量を低下させ、肝におけるAMPK蛋白を活性化するとともに、TNF-α、IL-6、IL-18、IL-1β mRNAの発現を有意に抑制した。【結論】EGCGは、肥満・糖尿病・インスリン抵抗性に関連した分子異常を標的とすることで、肥満や肝脂肪化に起因した大腸および肝発癌を抑制した。今回の研究結果は、緑茶カテキン等を用いた積極的介入による肥満関連分子異常の改善は、肥満や糖尿病患者の大腸および肝発癌予防を実践する上で有効な手段である可能性を示唆するものである。
索引用語 緑茶カテキン, 肥満関連発癌