セッション情報 ワークショップ18(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患におけるprobioticsと機能性食品の有用性

タイトル 消W18-10:

ガストリントランスジェニックマウスを用いた茶カテキンによる胃発癌予防効果の検討

演者 大野 崇(福井大附属病院・消化器内科)
共同演者 大谷 昌弘(福井大附属病院・消化器内科), 中本 安成(福井大附属病院・消化器内科)
抄録 【目的】茶カテキンはフラボノイドの一種であり、抗菌、抗酸化、抗腫瘍、肥満抑制といった様々な生理活性作用が認められている。疫学的検討では緑茶高消費量群において胃癌発症のリスクが低下するという報告もあるが、未だ一定の見解は得られてはいない。In vitroにおける検討では茶カテキンは様々な細胞においてIFN-γなどの炎症性サイトカインの発現抑制効果や細胞増殖抑制作用が認められており、またラットを用いたMNNG誘導化学胃発癌モデルにおいても抗腫瘍効果が報告されている。今回、我々は自然経過で胃炎と胃癌を発症するガストリントランスジェニック(INS-GAS)マウスを用いて、茶カテキン長期投与による胃炎と発癌に対する予防効果に関して免疫病理学的検討を行った。【方法】雄INS-GASマウスに対して生後9週より緑茶抽出物を2000ppm.の濃度で飲用水に溶解して継続投与した。投与開始後4週と28週に解剖を行い、半定量的scaleを用いた病理組織学的検討とサイトカイン関連分子のmRNA発現量をreal-time PCR法にて評価した。対照としてカテキン非投与INS-GASマウスを用いた。【成績】カテキン投与群の体重は非投与群と比較して4週後および28週後に有意に低下していた(p<0.01)。病理組織学的検討ではinflamatory scoreは有意差を認めなかったが、dysplasia scoreがカテキン投与群において有意に低値であった(28週:カテキン群平均 2.44 vs. 非投与群平均 1.69 ;p=0.0255)。また、IFN-γのmRNAレベルは4週後の時点で有意に低下していた(p<0.01)。TNF-α、IL-1β、iNOS、leptinに関しては有意差を認めなかった。【結論】INS-GASマウスを用いた胃発癌モデルにおいて、茶カテキンはINF-γの低下作用を伴って、高ガストリン血症が誘導する胃粘膜dysplasiaに対して抑制効果を発揮する可能性が考えられた。
索引用語 カテキン, 胃がん