セッション情報 ワークショップ18(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患におけるprobioticsと機能性食品の有用性

タイトル 肝W18-13:

Sulforaphen(SFN)による転写因子Nrf2賦活化はメチオニンコリン欠乏食(MCD)誘発脂肪性肝炎の炎症と線維化を抑止する

演者 岡田 浩介(筑波大大学院・消化器内科学DELIMITER筑波大大学院・スポーツ医学)
共同演者 正田 純一(筑波大大学院・スポーツ医学), 徳重 克年(東京女子医大・消化器病センター消化器内科)
抄録 【目的】酸化ストレスは単純性脂肪肝から脂肪性肝炎への進展に重要な要因である.我々は酸化ストレスに対し生体防御機構を発動する転写因子Nrf2に着目し, MCD誘発脂肪性肝炎モデルにおいてNrf2が肝病変の発症と進展を防御することを報告した(Am J Physiol 2010).今回は治療的観点から,Nrf2過剰発現マウスであるKeap1 knockdown (kd)マウスにMCD食投与を行い,更に,野性型(WT)マウスに対してブロッコリースプラウト(新芽)からNrf2の活性化剤として見出されたSulforaphen(SFN)をMCD食と同時に投与し,Nrf2の賦活化が脂肪性肝炎の発症と進展に対して抑止効果を示すか検討した.【方法】12週齢のWT,Nrf2遺伝子欠損(Nrf2-null),Nrf2過剰発現Keap1-kdマウスにMCD食を6週および13週間投与して解析を行った.また,SFN+MCD食(500mg/kg)を作製しWTへの投与を行った.【成績】6および13週間投与の双方において,Keap1-kdでは脂肪性肝炎(脂肪化,炎症,線維化)の病理学的変化は殆ど認められず,一方, Nrf2-nullではWTと比較してより重症の脂肪性肝炎像を呈していた.Nrf2制御下の抗酸化ストレス遺伝子群は,Keap1-kdではそれらの発現レベルが著明に増加していた.一方, Nrf2-nullではごく軽微か認められなかった.WTのSFN+MCD投与群ではMCD投与群と比較して,脂肪性肝炎における炎症および線維化が有意に抑制されていた.Nrf2-nullマウスではSFNによる改善効果は認められず,このことより,SFNはNrf2の活性化を介して酸化ストレスの増加を抑制し,その結果,肝病変の増悪を防御したものと考えられた.【結語】Nrf2はMCD誘発脂肪性肝炎に対して,酸化ストレス消去系分子の発現誘導を介して,肝病変の発症と進展に抑止的役割を果たすと推測された.SFNによるNrf2活性化はNASHに対する新しい治療手段として有用であると考えられた.
索引用語 Nrf2, sulforaphen