セッション情報 ワークショップ18(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患におけるprobioticsと機能性食品の有用性

タイトル 消W18-15:

クランベリーおよびザクロ果汁の抗ヘリコバクター・ピロリ作用について

演者 松嶋 成志(東海大・消化器内科)
共同演者 鈴木 孝良(東海大・消化器内科), 峯 徹哉(東海大・消化器内科)
抄録 【目的】ヘリコバクター・ピロリ(HP)感染症は、慢性的な胃粘膜の炎症をもたらし多くの疾患を引き起こすことが知られているが、感染者のほとんどを占める慢性胃炎患者に対しては保険適応がない状況である。また、抗生物質耐性菌の増加も大きな問題となりつつある。機能性食品の応用は魅力的な解決策の一つであり、われわれはクランベリー果汁の抗HP作用について報告してきた。クランベリーのHP増殖抑制作用は臨床分離株の一部に限定されたものであり、またHP感染者への果汁投与試験においても、投与前後の尿素呼気試験値には明らかな変化は認められなかった。他の果汁を用いた予備実験において、HP標準株の増殖抑制作用を比較したところ、ザクロ果汁に強い効果を認めた。この効果の普遍性を評価するため、臨床分離株を用いて増殖抑制作用を検討した。また、HPによる胃培養細胞からのインターロイキン8(IL-8)産生に対する抑制効果についても検討を行うこととした。【方法】HP標準株としてNCTC11638株を、また、患者より得られた臨床分離株27株を対象とした。培地にザクロ濃縮果汁を添加、無菌処理後、液体培養およびプレート培養を行った。液体培養ではOD660にて濁度を経時的変化と培養2日後のtitrationで、プレート培養では寒天希釈法にて評価した。IL-8産生については、MKN45に対し50倍量のHP生菌を加え16時間後の培養上清のIL-8量をELISAで定量した。【結果】ザクロ果汁は標準株および臨床分離株のすべてに対し、増殖抑制作用を示した。IC50は液体培養では約2%、プレート培養では約8%であった。IL-8産生についても、IL-8産生刺激能をもつすべての株に対し抑制効果を示した。【結論】ザクロ果汁はクランベリー果汁と異なり、検討したすべての臨床分離株に対し増殖抑制効果を示した。また、IL-8産生刺激作用に対しても同様に抑制した。今後、動物実験およびヒトへの投与研究が望まれる。
索引用語 ヘリコバクター・ピロリ, ザクロ