セッション情報 シンポジウム18(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

食道表在癌、早期胃癌に対するESDの長期予後

タイトル 内S18-3:

長期成績からみた早期胃癌に対するESDの妥当性

演者 平澤 欣吾(横浜市立大市民総合医療センター・内視鏡部)
共同演者 粉川 敦史(横浜市立大市民総合医療センター・内視鏡部), 前田 愼(横浜市立大・消化器内科)
抄録 【目的】早期胃癌ESD症例の長期成績の検討。【対象・方法】2000年6月~2007年3月で、後ろ向きコホートで集積された早期胃癌ESD 症例477病変419例のうち、5年以上経過観察可能だった460病変404例を対象とした長期成績を検討した(追跡率96.4%)。【結果】絶対適応(G)群は192例、適応拡大(E)群は143例、適応外(N)群は69例であり、治癒切除率は84.3%であった。N群のうち、分割切除や側方断端陽性のみが理由で経過観察された18例中7例に局所遺残再発を認めたが、全例追加内視鏡治療により根治と判断した(再発確認期間2-36ヶ月)。残る51例は追加手術適応であったが、うち19例が高齢、併存疾患、手術拒否などの理由で経過観察、また32例に追加外科切除が施行され、うち4例にリンパ節転移を認めた。観察期間中央値68.4ヶ月(4-137ヶ月)での全生存率は、全症例で3年93.6%・5年87.1%であり、G群vs.E群の検討では有意差を認めず(5年:90.6%vs.90.2%)、また、治癒切除(G+E)群vs.追加手術施行群との検討でも有意差を認めなかった(5年:90.4%vs.81.3%)。経過観察中胃癌死はN群でのみ2例に認めた。1例は追加手術後に3年でリンパ節転移により、もう1例は術前から適応外と判断されるもpalliativeにESDが選択された症例で、ESD後約1年で腹膜播種により永眠した。異時性他臓器癌は35例に認められ、原発性肺癌、大腸癌の順で多かった。異時性多発は初回ESDから1年以上での新規病変と定義し、治癒切除症例のみを対象とし検討したところ、全累積発生率は3年2.4%・5年7.6%であった。臨床病理学的因子(年齢・性別・G群/E群・肉眼型・腫瘍径・潰瘍瘢痕有無・初回多発の有無)の解析では、初回多発病変であるという因子のみが異時多発の危険因子であった(Log Rank; p=0.005)。【結論】長期成績を主眼とした本検討は、適応拡大や追加外科治療の妥当性、そしてガイドラインにおける適応の厳守を支持する結果であり、また、異時多発や、局所再発の観点からも早期胃癌ESD症例の長期経過観察は必須であると結論づけられた。
索引用語 ESD, 長期予後