抄録 |
無症状の一般健常人を対象とするscreening colonoscopy(SCS)は、受診者に過大な身体的、精神的苦痛を与えないよう安全、安楽な大腸内視鏡(以下CS)を実施することが要求される。そのために細径scopeを用いて、X線透視を行わず(無透視)、鎮痛/鎮静剤を使用せず(無麻酔)、1人法にて実施する挿入法を“無透視、無麻酔1人操作法:simple total colonoscopy”と称して、我々のCS挿入の基本スタイルとしている。我々は1983年の内視鏡センター発足以来28年間で総数136,446件のSCSを行ってきた。そのうち2010年1月から12月までに亀田メディカルセンター幕張で施行されたSCSは2,932件で、到達部位はS状結腸0例(0%)、下行結腸1例(0.03%)、横行結腸10例(0.34%)、上行結腸2例(0.07%)、盲腸2,904例(99.05%)、不明15例(0.51%)であった。挿入時間は2分未満39例(1.3%)、2-3分未満206例(7.0%)、3-4分未満390例(13.3%)、4-5分未満390例(13.3%)、5-6分未満380例(13.0%)、6-7分未満270例(9.2%)、7-8分未満227例(7.7%)、8-9分未満168例(5.7%)、9-10分未満138例(4.7%)、10分以上691例(23.6%)、不明33例(1.1%)であった。スコープ挿入の際に受診者が感じた苦痛は、全くなかった(-)2,188例(74.6%)、少し痛かったが全体としては楽だった(+)666例(22.7%)、痛かったが我慢できた(++)62例(2.1%)、我慢できないほど痛かった(+++)6例(0.2%)、不明10例(0.3%)であった。検査として高い盲腸到達率と低い苦痛度を達成すると同時に、研修医に対する指導を行うこともまた重要な問題である。当院ではコロンモデルでのトレーニングを必須としているが、7名の卒後3年目医師の研修開始後20例の平均挿入率は59%であった。7名のうち6名が大腸内視鏡無経験であったにもかかわらず、研修当初から比較的高い挿入率となったのはコロンモデルが有用であった可能性が示唆される。今回我々は、細径scopeを用いた大腸内視鏡挿入法ならびにコロンモデルを用いた指導法を供覧する。 |